(フォーブスジャパン8月号より)
シリコンバレーでドーアの名を知らぬ者などいない。彼が投資してきた企業の多くは、文字通り世界を変えてきた。
だが、エコ関連企業への投資で失敗したことから、その“慧眼”の衰えを指摘する声もある。このまま玉座を失うのか?
創業43年。まだ若いIT産業にあってクライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ(KPCB)は、老舗ベンチャー投資会社と呼べるだろう。
その名門を率いるジョン・ドーア(63)のポートフォリオは、シリコンバレー発展の歴史そのものと言っても過言ではない。ネットスケープ、サン・マイクロシステムズ、アマゾンにグーグル……。大物を釣り上げたことで築いた資産は優に35億ドル(約4,200億円)を超える。
起業家の誰もが口を揃えて褒め称えるのが、その“先見性”と“慧眼”だ。「ジョンは誰よりも先に未来を見通す」とグーグルのラリー・ペイジCEOは語り、イントゥイットのビル・キャンベル会長は、「スティーブ・ジョブズと同じで、製品を選ぶ眼に秀でている」と評価する。
だが、そんなドーアも2009年以降、大きなヒットはなく、「Midas List」の上位から遠ざかっている。エコ関連の投資で失敗し、ソーシャルメディアの投資も逃している。また、元同僚から女性差別で訴えられるなど、試練のときを迎えている。