働き方

2024.12.25 08:15

「106万円の壁」崩壊で主婦・主夫の働き方はどうなるか

プレスリリースより

プレスリリースより

パートタイマーや主婦・主夫とって、社会保険の適用範囲を定める重要なボーダーライン「106万円の壁」。この106万円の壁をテーマに、調査機関「しゅふJOB総研」は仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層に対してアンケート調査を実施した。その結果、壁が撤廃されるのならば「年収を上げたくなる」「労働時間を増やしたくなる」と答えた人は約半数を占め、「年収の壁を意識せずに働きたい」という意欲が高まることが明らかになった。
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 ■調査概要
調査手法:インターネットリサーチ(無記名式)
有効回答者数:715名(※)
調査実施日:2024年11月26日(水)~2024年12月8日(水)まで
調査対象者:ビースタイル スマートキャリア登録者/求人サイト『しゅふJOB』登録者
※調査対象者のうち、家周りの仕事について「同居家族はいるが主に自分が担当」または「同居家族と自分で概ね平等に担当 」のいずれかを選択した人のみを抽出して集計。

約5割が106万円の壁撤廃に「賛成」


社会保険の適用範囲については現在、従業員数の規模要件や年収106万円以上という収入要件など、「週労働時間20時間以上」を除いた要件ついては撤廃することが議論されている。
 
今回の調査で「これらの要件が撤廃された場合、あなたが仕事する際の希望に影響はあるか(複数回答可)」と質問したところ、「今より年収を上げたくなる」と回答した人がもっとも多く39.6%。次いで多かったのは「今より労働時間を増やしたくなる」28.7%。「仕事する際の希望に影響はない」は23.6%で3番目だった。

 
また「従業員数の規模要件や収入要件を撤廃して社会保険の適用範囲を拡大することについてどう思うか」という項目では、「賛成」と答えた人は49%、「反対」は22.4%で、106万円の壁撤退を歓迎する声が多数だった。

 

賛成派の具体的な理由としては、「年収の壁がなくなると仕事を増やして頑張ろうと思えそうだ(40代派遣社員)」「そもそも必要ないと思っている。働きたいだけ働いて平等に税金、社会保険料を払えばいいだけのこと(50代パート・アルバイト)」「目先の収入の減少より、将来の年金受取額が増えるのであれば、壁を越える方を選ぶ(50代派遣社員)」と、働く意欲が高まるというコメントが目立った。
 
また「最低賃金が上がっている中で、年収の上限が変わらないのはおかしい(30代パート・アルバイト)」「働ける人が働くことを控えるのはおかしな話だと思う。日本は労働人口も減っていくので、使用者側も労働者側もwinwinの働きやすい環境整備を国が検討していくことは必要だと思う(40代契約社員)」と、これまでの施策に疑問をぶつける声もあった。

あえて現状を選んでいる人は「反対」

少数だが全体の約20%存在した反対派の意見にも注目したい。「今の状況が自分にとってはベストなため、子育てをしながら働くとなると大いに反対(40代パート・アルバイト)」「年収に制限をかけて働く人には、介護などでわずかな時間しか働けないなどいろいろな理由がある(40代今は働いていない)」「体力的にぎりぎりなのに経済的にぎりぎりにしないでほしい(40代パート・アルバイト)」「壁があったから、就業時間を減らすことができた。これからは子どもの学校行事などで休みたくても休めなくなるかもと不安に思う(50代派遣社員)」といった、さまざまな事情で“あえて今の状況にいる”人も存在した。
 
また反対派には「枠を外しても結局200万も稼げないのだから、扶養・社会保険の枠を200万にしてほしい(50代パート・アルバイト)」「社会保険に入ると今よりたくさん保険料が取られて手取りが減ってしまうので入りたくない(30代パート・アルバイト)」という経済的な懸念の声も寄せられた。

「どちらとも言えない」層の複雑な本音


全体の約3割の人が「どちらとも言えない」と回答したが、この層の意見も大変興味深い。「社会保険の方が年金額が増えるのは嬉しいが、今現在の手取りが少なくなるのは大変辛い(60代パート・アルバイト)」「健康保険の負担金はバカにならないので、扶養で働きたい人が多いのでは(50代フリー・自営業)」と痛し痒しな思いを抱える人もいれば、「子どもと向き合うために仕事をセーブせざるを得ない(50代パート・アルバイト)」「家事の負担が変わらない限り働く時間を増やそうとは思えない(50代パート・アルバイト)」といったワークバランスの難しさから「どちらとも言えない」に一票を投じた人もいたようだ。
 
他にも「もっとわかりやすく制度を説明してほしい(40代・SOHO在宅ワーク)」「少し複雑でまだ理解できていない(50代今は働いていない)」といった意見も見られた。確かに「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」と、100万円台の年収には壁が次々と立ちはだかっていることもあり、これらもパートタイムで働く人たちを混乱させる一因となっているように見える。
 
「しゅふJOB総研」の研究顧問・川上敬太郎氏は今回の調査結果を受けて、次のように語った。「106万円の壁撤廃には賛成する声が多いものの、手取りが減ることを避けたい層も一定数いる。物価高が続く中、家計が厳しい状況にも配慮し、丁寧に制度変更を進める必要がある」。
 
家庭と家計を支える人たちにとって依然として大きな問題である「106万円の壁」。その撤廃が働き方や家計にどのような影響を与えるのか、今後の政策動向に注目したい。
 
プレスリリース

文=福島はるみ

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