上記のことは、米国道路安全保険協会(IIHS:米国の保険業者が資金を助成する非営利団体)から発表された新たな研究の主な調査結果である。この研究では、自動車が歩行者と衝突事故を起こした際、フロント部分の高い車両は、低速でも深刻な傷害の原因となり得ることが示されている。
「衝突速度がわずかに高くなるだけで、実際に歩行者に対する危険は大幅に高まる」と、IIHSのデビッド・ハーキー会長は声明で述べている。「米国では背の高いSUVやピックアップトラックが好まれるが、そのために衝突事故の影響は増大している」
事故の危険度を欧州と比較すると、背が高いSUVよりも標準的な乗用車のほうが普及している欧州に対し、米国のほうが歩行者は低速の事故でもより深刻な傷害を受けるおそれが大きいということになる。
「米国における近年の歩行者が負傷する危険度を示す曲線:衝突速度と車両前部の高さの複合効果」と題したこの研究で、研究者たちはミシガン州、カリフォルニア州、ニュージャージー州、テキサス州で発生した202件におよぶ歩行者対車両の衝突事故を分析した。その目的は、衝突速度や車両の高さによって歩行者が負傷または死亡する可能性や深刻度がどれだけ異なるかを測ることだった。
車両前部の高さに関係なく、衝突時の速度が上がるほど、これに関連するあらゆる負傷の深刻度が高くなる危険性は増大すると、研究者は述べている。死亡者が懸念される事故全体で、時速20マイル(時速約32キロメートル)で走行する車両に衝突された歩行者が負傷によって死亡する確率はわずか1%だったが、時速35マイル(時速約56キロメートル)になると死亡に至る危険度は19%にまで高くなり、時速50マイル(時速約80キロメートル)では80%を超える。