しかし、車両の前部が高いとその深刻さは悪化する。
調査対象となった202件の事故の平均速度である時速27マイル(時速約43キロメートル)で衝突した場合、全高が中程度の車両が歩行者に中程度の怪我を負わせる確率は60%、重傷を負わせる確率は30%であることが、今回の研究で明らかになった。これに対し、全高が中程度のピックアップトラック(一般的な乗用車より車両前部が33センチほど高い)では中程度の怪我を負わせる確率は83%、重傷を負わせる確率は62%だった。
この調査結果は、車体前部の高さが標準的な乗用車よりも高い車両(ピックアップトラックやSUVなど)ほど、歩行者と衝突した際に死亡させる確率が高くなるという、米国道路安全保険協会による
以前の研究と一致する。
例えば、全高が中程度の車両が事故を起こした場合、衝突時の速度が時速15マイル(時速約24キロメートル)から時速35マイル(時速約56キロメートル)に上昇すると、歩行者に重傷を負わせる危険度は9%から52%に増大する。中型ピックアップトラックでは、この危険度が11%から91%に激増する。
速度がわずかに下がるだけでも歩行者の安全向上に寄与する可能性がある。例えば、衝突速度が時速30マイル(時速約48キロメートル)から時速25マイル(時速約40キロメートル)に落ちると、歩行者が重傷を負う危険性を3分の1以上も減らせる。しかし、それでも混雑している市街地中心部や歩行者の通行が多い地域では、米国の住宅街で一般に用いられている時速25マイルという制限速度は高すぎる可能性があると、研究者たちは指摘している。
この研究結果は「速度制限や交通静穏化について考える際に、政策立案者や交通工学の専門家は米国の車両構成を考慮する必要がある」ことを強調するものだと研究者は述べている。また、歩行者との衝突事故を防止・削減するために、自動車会社が改善できることは車体前部のデザインを修正し、より強力な自動緊急ブレーキを装備することだと指摘した。
「この研究は、いかに複数の要因(この場合は速度と車体の高さ)が集まって悪い結果を路上で生み出すかを、鮮明に描き出している」と、ハーキー会長は語る。「同様に、歩行者の安全を改善するためには、交通の世界における種々の分野から複数の取り組みを組み合わせることが必要になるだろう」
この研究に関する詳しい情報や、車両速度による歩行者の危険度を示すグラフは、米国道路安全保険協会の公式サイトに
掲載されている。
研究結果の報告書もダウンロードできる。
(
forbes.com 原文)