女性の働きやすさを追求した結果、理想の環境に行き着いた──。健康経営を叶える「淡路島モデル」に学ぼうと、パソナの淡路島拠点には全国から視察が相次ぐ。社員と企業、地域社会まで幸せにする働き方とは。
人材派遣サービスで知られるパソナだが、軸足を兵庫県淡路島に移したことで、働き方だけでなく事業内容も多様化が進んでいる。「雇用創造業」を標榜し、新たなビジネスを次々に生み出しており、人材派遣業以外の売り上げがすでに祖業を上回る。
成長を支えてきたのは、グループ全体の約6割を占める女性たちだ。1976年に代表の南部靖之がパソナを創業したのは、育児を終えてもう一度働きたいと願う女性たちを応援したいとの思いからだった。在宅勤務やワークシェアリングといった柔軟な働き方を、半世紀近く前から実現してきた。
女性が活躍できる場をつくり、女性を支え続けてきた結果、女性管理職の割合は37.4%(パソナグループとパソナ合算)、グループ全体(国内連結子会社69社の合算)だと47.8%にのぼる。「自分のキャリアは自分が創る」という人材育成方針にのっとった取り組みが実を結んだ結果だ、とパソナグループ常務執行役員の金澤真理は胸を張る。
「女性はライフイベントによって仕事に対する価値観がどんどん変化する。個人の努力任せにするのではなく、企業側が女性の頑張りを支援する制度を整えるのは必須と考えています」
そのひとつが10年前から実施している「ワンダーウーマン研修」だ。幹部候補の女性社員がマネジメントスキルを磨き、経営視座を高めるための実践型プログラムだ。組織が目指す方向や経営についての心得を経営トップから直接聞く機会が与えられ、受講者の7割が実際に昇格を果たしている。
「こうしてロールモデルを増やすことで、次世代の女性活躍を後押しできる。私自身も出産・育児を経験して役員に就任しましたが、そこには『子育て中の女性でも役員になれるというモデルになってほしい』という会社側の期待も込められていると感じています。先輩世代にも女性役員はたくさんいますが、家庭環境が多様化し、幅広い世代のロールモデルが求められているのだと思います」(金澤)
パソナはこのプログラムを「Women’s Advanced Program」として外部企業にも展開し、幹部候補の女性たちを集めて合宿形式で経営人材育成を行っている。ここで生まれた横のつながりは、業種業態を超えたアルムナイ組織に発展し、研修修了後も幹部女性たちの貴重な交流の場になっている。