「困ったらすぐ報告、悩んだらすぐ相談という文化が社内に根付いている。おかげでひとりで悩みを抱えずに済みました」
「女性の上司にも『姉さん、聞いてください!』という感じで、気兼ねなく話しかけることができる」(金澤)
単に女性の数を増やすのではなく、コミュニケーションの量を増やす。パソナでは研修や合宿など、オフィス外の環境で共に時間を過ごす機会が多いが、これもコミュニケーションの機会を増やし、信頼関係を醸成するのに役立っているという。
職住学近接で「諦めない」を叶える
パソナが本社機能の一部を淡路島に移転すると発表したのは2020年。以降、管理部門だけでなく営業部門の移転も進み、淡路島に転勤した社員の数は、現時点で本社勤務の3分の2に当たる1200人を超えた。代表の南部をはじめ、役員も半数が移住しており、東京勤務のときと変わりなくスムーズに業務を行っている。大日向は、ほかの社員に先んじて20年3月に移住し、住宅の確保など生活機能を整えてきた。
「社員の多くが懸念していたのが、子どもの教育でした。保活問題や、共働き家庭が直面する“小1の壁”問題をどうクリアするのか。習い事も含め、都会に負けない教育環境を整えたいと考えました」
大日向が出した答えは、インターナショナルスクールの設立だ。
このスクールでは0歳から保育園、3歳から受け入れ可能とした。外国人教師による英語指導はもちろん、空手やピアノ、バレエなど、習い事も校内で完結する。同じビルにはパソナのオフィスと社宅を備え、職住学の近接を実現。19時まで仕事をして、階下のスクールに子どもを迎えに行くという生活も可能だ。
「東京では時間的にも精神的にも余裕がなかったという保護者の方も、ここでは安心して子どもを預けられるので、仕事に集中できるようになったと話しています」(校長の幣原みや)
この手厚い教育環境が、淡路島で働くパソナ社員の子女専用で、保育料は無償というから驚く。こんなサポートがあれば、多くの女性がキャリアを中断することなく仕事を続けていけるはずだ。
「ひとり親 働く支援プロジェクト」も、淡路島で始まった女性支援策だ。未就学児をもつひとり親を対象とした制度で、淡路島での就労を、柔軟な働き方や子育て環境とセットでサポートする。キャリア採用チームで働く康薫美は、この制度を利用して入社し、息子とともに大阪から移住した。
「前職は金融機関でしたがブランクが長く、離婚したときは専業主婦。ひとりで子どもを育てられるか不安でしたが、充実した研修制度のおかげでスムーズに仕事に復帰でき、何より子どもを安心して預ける場があるのがありがたかった」(康)