ファッション

2024.12.23 14:15

ライフスタンスが「ドバドバ」と溢れ出すブランドの正体

tamaki niimeのLabの床に書かれたメッセージ。

tamaki niimeのLabの床に書かれたメッセージ。

PARaDE代表の中川淳が、企業やブランドの何気ない“モノ・コト”から感じられるライフスタンスを読み解く連載。今回は「ライフスタンスがドバドバと溢れ出ていた」と中川が話す、「tamaki niime」というブランドに焦点を当てる。ライフスタンスが溢れ出ているというのは、一体どのような状態なのか。
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先日、古くからの友人に「面白いところに行くから一緒に来ないか」と誘われ、兵庫県西脇市にある「tamaki niime」のLab(工房)兼ショップを訪れた。それは播州織のショールが有名なブランドで、私は同じ業界なので実は以前から知ってはいた。代表の玉木新雌氏とも軽く面識はあったのだが、ブランドの深い背景についてはあまりよく知らなかった。今回は信頼できる友人からの誘いだったし、このタイミングというのも何かのご縁かもしれないと考え、現場に向かった。もちろん、この連載の記事にすることは想定していなくて、完全にプライベートの旅気分での訪問である。
tamaki niimeのLabの様子。

tamaki niimeのLabの様子。

アルパカまで! ものづくりを垂直統合

到着して早速、Labやショップを見せてもらったのだが、のっけからライフスタンスをドバドバと浴びせられた(笑)。完全に不意打ちである。まず目にしたのは、Labのところどころにまるでアートのように大きくペイントされた言葉たちだ。Labの床や壁、POPなど、さまざまなところに「あたりまえを疑え」「シンカ」「変態モノづくり集団」……などと描かれている。

続いてショップに行ってみると「やっぱり自給自足なんだと思う」「ファッション・ブランドではないんですよ。僕らは『ネイチャーブランド』やと」などなど……。続いてプロダクトを手に取ってみると、作品の箱に「ないからつくる」「そこまでやる?」「自然とともに生きる」などなど……。こちらが「そこまでやる?」と問いかけたくなるほど、自分たちの伝えたいことをストレートに発信している。まさにライフスタンスがすべてから溢れ出ているのだ。

普通はここまで直接的にメッセージを主張されると引いてしまうものだが、tamaki niimeの場合はアートを見ている感覚。マーケティング感覚で気を引こうとして発せられるものとは明らかに違う。伝えたい気持ちが自然に滲み出た結果であり、作り手やプロダクト、周辺環境、デザインなども含めた世界観の中での発信なのでとても好感が持てるし、魅力がヒシヒシと伝わってくる。
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もちろん、こういった肌触りのブランドは他にないわけではない。作家さんの個性や想いが滲み出て、何か特別な光りを放っているブランドは多数存在する。tamaki niimeにライフスタンスを感じたのは、そういった点に加えて、ビジネス的な感覚をしっかりと兼ね備えてグロースさせているところだ。
アルパカは敷地内を自由に歩き回っている。

アルパカは敷地内を自由に歩き回っている。

例えばtamaki niimeは、製造業では難易度の高い、原料の栽培、織り、編み、染め、縫製、販売まで一貫して行う垂直統合を実現している。農薬不使用のコットンの栽培はもちろん、なんとアルパカまで飼っているのだ。それも完全に計画的にやっている訳ではない。例えば染色にしてもロットの問題で外に出すのが難しいから自分たちで染めてみようとか、仕様が複雑すぎて外の工場に出せないから、自分たちで機械を買ってやろうなど、「自分たちの変態的なものづくりのためには、自分たちでやるしかない」という精神で活動していたら、自然と垂直統合になったというのが正直なところであろう。

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文=中川 淳 構成=国府田 淳 写真=tamaki niime提供

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