両社の台頭で中国のメーカーが長年悪用してきたあまり知られていない関税の抜け穴が脚光を浴び、トランプ次期米大統領の廃止リストに載っていると報じられている。
新型コロナのパンデミック(世界的大流行)で促進された中国製アパレルの輸入の急増ぶりは凄まじい。
シーインの2023年の総売上高は320億ドル(約4兆8420億円)と2019年の10倍で、今年は500億ドル(約7兆円5660億円)にもなると予想されている。
その売上の約3分の1は米国であげており、シーインは今や米国のネット販売のファッション市場を圧倒しており、アマゾンやウォルマートをしのいでいる。
米国での新規株式公開(IPO)が頓挫したシーインは、英ロンドン証券取引所に間もなく上場することを目論んでいる。同社の成功は安価な労働力やオンデマンド生産、消費者直接取引(D2C)によるものだ。
シーインは表に出さないが、800ドル(約12万円)未満の小包は免税となる「デミニミス」と呼ばれる関税の抜け穴がある。これは米国行きの国際線の乗客なら誰でも知っている規定で、客室乗務員が配る税関申告書に記載されている。旅行者は海外で購入した品物の価格を記載することになっており、総額が800ドル以下であれば商品は免税となる。
シーインとテムは注文ごとに小包で発送し、平均的な注文の価格は800ドルをはるかに下回るため、米国に送られた荷物は免税となっている。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの最近の報道によると、今年のデミニミス措置対象の10億を超える小包のほぼ3分の1がシーインとテムのものだという。
一方、商品を大量購入する米国の小売業者は関税を払うしかない。
一部の人は何年もこの関税の抜け穴について苦言を呈してきたが、効果はなかった。それが次期政権によって変わろうとしている。
新政権のメンバーらは中国からの輸入に規制を設けることを優先課題としている。これは大変な作業となるだろう。関税の問題もさることながら、毎日200万個以上中国から届く荷物を検査するのは不可能だ。
シーインは他にも問題を抱えており、このため米国でのIPOが進まなかったと思われる。
中国の富豪が所有し、シンガポールに本社を置くシーインは「止められない使い捨てファストファッションの顔」として批評家に知られている。同社は中国では商品を販売していないが、中国の約6000の工場から商品を仕入れている。
シーインとテムの成功は象徴的であり、同時に皮肉でもある。
両社のファッションの購入者の大部分は、調査でいつも持続可能性に最も関心を持ち、持続可能性を意識した行動を取ろうとする人が多いとされているZ世代だ。
競合する米国の小売企業がZ世代をターゲットにしたマーケティングを展開することで流れを変えられるかどうか、興味深いところだ。今後あり得る値上げにZ世代がどう反応するかも注目される。
(forbes.com 原文)