欧州

2024.12.08 08:00

ウクライナ特殊部隊、高層アパートに爆薬を仕掛け丸ごと爆破 東部トレツク

Shutterstock.com

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ロシアによるウクライナに対する全面戦争の1300km近くにおよぶ戦線のいくつかの重要方面で、ロシア軍はゆっくりと前進している。その過程でロシア軍はこのところ1日に人員を1200〜2000人、重装備を最大100点ほども失っているが、兵員数、火力ともに劣る現地のウクライナ軍部隊や、戦場になった集落や都市に住んでいた人たちにとってはたいした慰めにならないだろう。

しかし、ある重要な都市ではウクライナ側が前進している。どのように前進を遂げているかは、この戦争が4年目に入ろうとするなかでウクライナが続ける必死の努力を物語っている。全面戦争前におよそ3万5000人が暮らしていたウクライナ東部ドネツク州トレツク市のロシア軍占領地区を解放するため、現地のウクライナ部隊は、高層アパート全体を爆破して、中に潜むロシア兵らを瓦礫にうずめて葬り去ろうとしている。

12月第1週のいつかとみられる夜間、ウクライナ国家親衛隊の特殊部隊「オメガ」のチームは闇に紛れて、トレツク中心部のスウィートラ通りにあるロシア軍支配下の高層アパートを急襲した。装甲トラックの上部から射手が重機関銃を撃ちまくるなか、後部から隊員たちが重爆薬をアパートの脇の穴に投げ込み、急いで車内に戻る。

「行くぞ!」隊員のひとりが叫ぶ。数秒後、爆薬が起爆され、アパートの数階の窓から爆風が吹き出す。
ウクライナ側がトレツクの街区を解放するために、そこにある建物を丸ごと取り壊すのはこれが初めてではない。10月上旬、衛星画像や前線部隊のドローン映像などの動画を綿密に観察している人たちは、両軍が数カ月にわたり凄惨な市街戦を繰り広げているトレツクで異変が起こっていることに気づいた。

あるアナリストは、トレツク中心部の高層住宅地区のロシア軍陣地に対するウクライナ軍の攻撃にパターンがあることを発見した。ウクライナ側は砲爆撃に続いて、歩兵による強襲を行っている形跡があった。そして、強襲後に砲爆撃はやんでいた。ウクライナ側が強襲によってロシア軍部隊を陣地から排除したと推測できる。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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