ハイランドシングルモルト「グレンモーレンジィ」が、世界的なフラワーアーティスト東信氏とのコラボレーションボトル「グレンモーレンジィ 23年 by Azuma Makoto」をリリースした。飲む人の心を深く揺さぶる、その味わいとボトルに込められた想いとは?
年の瀬を迎え、「今年もあっという間でしたね」などとあいさつを交わすことが増えてきた。年々日々は加速して過ぎ去っていくように感じられるが、仏の哲学者ジャネーによると1歳児が1年を365日と体感するのに比して、50代は1年を1週間のように感じるのだという。年齢を重ねるにつれ、自分の人生における1年の比率が小さくなるというわけだ。1週間とはいくらなんでも短すぎだが、たしかに学生の頃と比べれば半分か、それ以下にはなっているかも。時間は誰にでも等分に与えられているものではないようだ。
では時間とはいったい何か——このほどリリースされたハイランドシングルモルト「グレンモーレンジィ 23年 by Azuma Makoto」を味わいながら、柄にもなく哲学的な問いが浮かんできた。筆者は上質なウイスキーにはひとりで向き合うことが多いので、往々にして内省的になりがちなのだが、このウイスキーは世界的なフラワーアーティスト東信氏によるラベルをまとっているからであろうか、とくに私の心を深く揺さぶってきたのだ。
200種以上の草花が彩るボトルデザイン
世界的なフラワーアーティスト東信氏とコラボレーションした「グレンモーレンジィ」。
何が私の心を揺さぶったのか。それは「グレンモーレンジィ 23年」というシングルモルトのもつ永続性と、ラベルとボックスを彩る200種以上の草花の刹那の美しさの相反だ。東信氏が「グレンモーレンジィ」とコラボレーションするのは2回目だが、前回「グレンモーレンジィ 18年 by Azuma Makoto」の際には100種以上の草花が用いられたのに対して、今年、「グレンモーレンジィ23年 by Azuma Makoto」のためには200種以上の草花が用意されたのだとか。熟成の長さに比して増していく複雑味を表現するために多くの草花が必要だったということだろうか。東氏にたずねた。
2002年にオートクチュールのフラワーショップを立ち上げ、創作を開始したフラワーアーティストの東信氏。