食&酒

2024.12.05 15:15

「グレンモーレンジィ 23年 by Azuma Makoto」に見る、刹那と永遠の美

「前回のコラボレーション(2021年)はパンデミック中だったこともあり、ビル・ラムズデン博士(グレンモーレンジィ蒸留所 最高蒸留・製造責任者)とのやりとりもすべてオンラインで行われていました。今回はリアルにお会いできる状況でしたので、まず私がしたのはハイランドのグレンモーレンジィ蒸留所を訪れたこと。ハイランドの風や土、蒸留所の匂いや樽の触感、さらにビル博士と飲み交わしたことでイメージが深まり、このように(200種以上に)なりました。

ビル博士からはとくにこれと言ったリクエストはなく、『紫の花を使ってほしい』という簡単な言葉をもらっただけなんですけれどね(笑)。彼と一緒に森の中を散策していたらもっと自然を大きく捉えたいという想いが強くなってきて、草花のみならず樹皮やハチの巣なども使用しています。だからテーマと言えば、森羅万象となるのかな」
バーボンカスクで長期熟成させたシングルモルトをブルゴーニュ・ムルソー地区で使われていた白ワイン(シャルドネ)樽で仕上げたウイスキーとブレンド。

バーボンカスクで長期熟成させたシングルモルトをブルゴーニュ・ムルソー地区で使われていた白ワイン(シャルドネ)樽で仕上げたウイスキーとブレンド。

東氏の言葉を聞いてから味わってみると、華やかで芳醇なグレンモーレンジィらしい味わいの奥底に、雨で湿った苔やオーク、土などのニュアンスが感じられ、端的に表現するなら「EARTHY」な味わいであった。23年熟成のウイスキーということは、20世紀に栽培された大麦が発酵され、蒸留され、23年に渡って樽のなかで眠っていたということ。その時間が凝縮した一滴を飲みこむのは、まさに自分自身の半生を味わうのと同じで、おのずと自分の内面を覗き込みたくなる。

とくに「グレンモーレンジィ 23年 by Azuma Makoto」については、生命の短い草花がラベルにあしらわれていることで、ウイスキーのもつ永続的な価値と草花の刹那の美のコントラストが印象的であった。かつて稲垣足穂は「詩は歴史性に対して垂直に立つ」と書いたが、草花や自然の万物の放つ美しさも一瞬の、一編の詩のようなものであろう。長い時の上に垂直に立つ一瞬であるからこそ忘れがたいし、その長い時間の蓄積である永遠もまた一種刹那とも言える……な~んて、アラ、ちょっと飲み過ぎたかな?

グレンモーレンジィ 23年 by Azuma Makoto
700ml 200,200円(希望小売価格)

text by Miyako Akiyama

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