12月2日から紙の健康保険証の新規発行が停止され、今後はマイナンバーカードと保険証を一体化させたいわゆる「マイナ保険証」に本格的に移行する。マーケティング支援事業を展開するネオマーケティングは、マイナンバーカードを持っている20歳以上の男女1000人を対象にマイナ保険証に関する調査を実施したところ、マイナンバーカードを保険証として使えることを知っている人は、全体で約97パーセント。すべての年代で9割を超える人が知っていた。とくに50代以上の高齢者はほぼ全員が知っている。実際にマイナ保険証を使っている人も、60代以上が多い。
内閣府の『令和4年 高齢者の健康に関する調査結果』によれば、高齢者の3割強が月に1回、医療サービスを利用している。75歳を超えると6割にもなる。高齢者は医療機関のヘビーユーザーであり、それだけに健康保険証やマイナ保険証への意識も高いわけだ。マイナ保険証のメリットを理解している人の割合も、60代以上が比較的多い。
ところが、マイナンバーカードを保険証として利用登録することに対しては、若い世代ほど抵抗が少なく、高齢になるほど反対派が増える。反対理由のトップは、紛失や盗難の心配。次に個人情報の漏洩となった。システムエラーや障害、医療機関の対応状況の心配も少なくない。意外なことに、「高齢者やITが苦手な人は不便だと感じる」という反対理由は8位と少なかった。
高齢者は、マイナ保険証のメリットはわかっているし、ITに不慣れなわけではないが、個人情報の漏洩を強く心配している。つまりそれは、マイナンバーカードの運用に対する不信感の表れだと言える。事実、マイナ保険証の利用時に経験したトラブルについて尋ねると、医療機関が対応していなかったとの回答がもっとも多く、受付でシステムが混雑、通信エラー、認証や読み取りの失敗などがあげられている。暗証番号を忘れた、使い方がわからないといった利用者側の問題も含まれるが、紙の保険証ではなかったことだと考えると、マイナ保険証の問題と言える。
マイナ保険証に未対応という問題は、2023年4月に対応が義務づけされた以降は生じていないはずだが、システムエラーや読み取り失敗などの現場の混乱はしばらく続きそうだ。医療情報の共有、電子お薬手帳との連携、医療費控除の申請などデジタル化による利便性に加え、医療事務の軽減にも寄与することも考えると、ぜひ利用したいところだが、健康保険証のヘビーユーザーである高齢者が訴える心配や不安に対し、行政には場当たり的でない、しっかりとした対応が望まれる。
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