食&酒

2024.12.11 14:15

自然派ワイン最前線 「Raw Wine」創業者が寄せるアジア市場への期待

Raw Wine主宰のイザベル・レジュロン

自然派ワインには厳密な定義はないが、一般的には有機農法(バイオダイナミック農法やパーマカルチャー農法)で栽培されたブドウを原料とし、セラーでは極力手を加えず造られたワインを指す。酸化防止のために使用される亜硫酸塩の使用については賛否が分かれるが、Raw Wineが認めるワインの亜硫酸塩量は1リットルあたり50mg以下。EU基準を大幅に下回り、ゼロのものも存在する。

一部の生産者は「自然発酵」「無濾過」など農業以外の生産工程に注力しがちであるとレジュロンは指摘する。過去には、有機栽培ではないブドウを使用しながら「自然派」を謳うメーカーからの営業もあったという。

他方、農業が起点となっているからこそ、その地域にある果実や野草を使ったクラフトドリンクも自然派ワインの仲間だ。ブドウ、リンゴ、ナシ、マルメロなど果樹園にある多様なフルーツを共発酵したクラフトドリンクも増えてきている。「自然派ワインのムーブメントには、作り手の大胆な冒険や“(発酵)遊び”に対してオープンという特徴があります」とレジュロン。結果、大胆な風味を持つ、創造的なクラフトドリンクが登場している。

例えばニューヨークのRaw Wineでは、地域の薬草を発酵させたノンアルコールのスパークリングワインを提供するノルウェーの生産者ヴィルブリグ(Villbrygg)や、ビートルートの発酵ドリンクを作るイタリアの生産者フェラル(Feral)が出展していた。

厳選した出展者 

Raw Wineの出展者はすべて、レジュロン自ら試飲して選び抜かれた生産者たち。有機農法であること、手摘みで収穫されていること、(自然に発生する)マロラクティック発酵を止めないことなどの独自の審査基準を設定し、それをクリアしてプラットフォームへの参加が認められた生産者のみがイベントに出展できる。

Raw Wineの既存メンバーである複数のワイナリーのリファレンスも必要だ。「日々、6〜7件の申請がありますが、審査を通過するのは10件中3件程度」だという。

ニューヨークのイベントでは彼女の案内で、3つのブースを訪問した。

まずはイベリア半島の北西部、スペインのガリシア地方リアス・バイシャスにあるワイナリー「コンスタンティーナ・ソテロ(Constantina Sotelo)のブース。オーナー兼ワインメーカーのコンスタンティーナ・ソテロは、1999年から独自のワインづくりを開始。

地域の白ブドウ品種アルバリーニョを使用し、栗の木樽やテラコッタ、コンクリートエッグなど多彩な容器で醸造。ブドウそれぞれの特徴を引き出した多様なワインを飲み比べると、同じブドウ品種とは思えない異なる味わいに驚く。どれもフレッシュな香りとジューシーさを持ち、口に含ませると多層的な旨味が広がる。日本での価格帯は3000円〜5000円。
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文・写真=ナカタマキ

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