14世紀にイタリアで始まったとされるバレエは、常にジュエリーのインスピレーション源となってきた。ヴァン クリーフ&アーペルも、18世紀に活躍した革命的なバレリーナ、マリー・カマルゴを表現した「バレリーナ クリップ」などを発表している。
その歴史のなかでも重要人物が、20世紀に活躍した元バレエダンサーで振付家のジョージ・バランシンだという。彼はメゾンの宝石にインパイアされてあるバレエ作品を創作した。
「彼がニューヨーク・シティ・バレエ団のために制作した『ジュエルズ』という作品があります。『ダイヤモンド』『エメラルド』『ルビー』という3つの宝石に捧げられた全3幕からなる作品です。それはそれぞれ、彼の生まれ故郷でバレエと出会ったサンクトペテルブルグ、振付師としてのキャリアを開花させたパリ、華やかで活気に満ちたニューヨークと人生の決定的な意味を持つ3都市へのオマージュにもなっています」(岡見)
アール・ヌーヴォー時代のパリで活躍し、モダンダンスの世界を切り拓いた伝説の舞踊家、ロイ・フラーについても触れた。彼女が創案した「サーペンタインダンス」は、全身を覆う特殊な衣装を自在に操り、花や蝶へとフォルムを変容させ、見るもののインスピレーションを掻き立てた。照明効果も用いたそれは、新しい表現として当時一世を風靡。今回、ダンス リフレクションズのフェスティバル公演の一つとして振付師、オラ・マチェイェフスカによって再解釈された作品が紹介された。
西洋におけるジャポニズム、バレエからモダン/コンテンポラリーダンスまで、時代とともに変化しながら、刺激し合い、人々を魅了する舞踊とジュエリーの世界。ダンスや観劇は芸術のなかでも多くの人にとって馴染みのうすい部類にあるが、こうした取り組みによりダンスのレパートリーや鑑賞者が増えることは、振付芸術、そして宝飾芸術といった多様な面で、新たな創造につながっていくのだろう。