時を超えて人々を魅了する独創的クリエイション
「王の宝石商、ゆえに宝石商の王」とまで時の英国王エドワード7世に言わしめたカルティエ。1847年の創業以来、そのジュエリーを魅力的に輝かせてきた要素のひとつが独創性だろう。それは新作ジュエリーを見ても明らかである。例えば1970年代に誕生した「LOVE」ブレスレット。ビスとドライバーでふたりの手首をロックアップできるという斬新なコンセプトは、当時の若者たちが絶賛した。そんなブレスレットから発展した「LOVE」コレクションはビスのモチーフを継承。コンテンポラリーな独創的デザインが新鮮だ。そしてカルティエを代表するコレクション「トリニティ」も、洗練された独創性に満ちあふれている。1924年、当時隆盛を極めた芸術運動アール・デコの神髄を具現化すべく、3色のゴールドが絡み合う独創的なリングを考案。三位一体を意味する「トリニティ」と名付けた。詩人のジャン・コクトーがこよなく愛し、2つ小指にはめていたのは有名だ。ホワイトゴールドには友情、イエローゴールドには忠誠、ピンクゴールドには愛という意味が込められており、人と人とのつながりを象徴するリングとして世界中で愛されている。そんな「トリニティ」誕生100周年を記念した新作は、これまでにないスクエアデザインで新たな魅力を打ち出している。
オーソリティが引き出すダイヤモンドの真の美しさ
宝石の最高峰といえばやはりダイヤモンドだが、そんなダイヤモンドにこだわり続け、“21世紀のキング オブ ダイヤモンド”とまで称されるようになったのがグラフである。創業者のローレンス・グラフ現会長が宝石職人としてロンドンのダイヤモンド街で働き始めたのは、弱冠15歳のとき。以来、ダイヤモンドへの情熱を抱き続け、1960年に22歳でグラフを設立した彼の元には、世界中から極上のダイヤモンドが集い、歴史的ダイヤモンドのカットをも手がける。そんなグラフらしいジュエリーが、ペアシェイプダイヤモンドを用いたコレクションだ。“Pear”が意味する洋梨を模ったペアシェイプは、まるで光の雫が結晶となったような美しさを湛える。そうしたペアシェイプダイヤモンドならではの輝きを最大限に引き出すべく、最小限の爪で精緻にセッティングされており、グラフが誇る技術力の高さがうかがえる。中央に大粒のペアシェイプダイヤモンドを用いたリングは、両サイドのテーパードバケットカットダイヤモンドのシャープな輝きがセンターストーンを一層引き立てる。そして動くたびペアシェイプダイヤモンドが揺れるネックレスとイヤリングは、あたかも煌びやかな光の芸術をまとうかのよう。
老舗がひしめくハイジュエリーの世界にあって、1960年創業のグラフは新参ともいえる。だが、世界各地の鉱山との独自のネットワークを築き、原石の入手からジュエリー製作までを自社で行う体制を構築。こうした自社一貫体制を整えているからこそ、さまざまな大きさやシェイプのダイヤモンドを取り揃えられ、適正価格の設定を可能としているのだ。またグラフ現会長自身が職人であったため、ジュエリーの品質が職人の目と手に委ねられていることを熟知しており、全工程でクオリティコントロールを徹底しているのもグラフらしい特徴といえるだろう。
エメラルドカットのダイヤモンドを用いたコレクションは、そうしたグラフの充実した体制があるからこそ生み出せたといえる。ひとつひとつのカット面が大きく、ストーンそのものを生かすエメラルドカットは、ダイヤモンドの内部まではっきりと見えてしまうカットであり、不純物なども目立ちやすい。つまり、原石の品質が特に求められるカットといっても過言ではないのだ。すなわち大粒のエメラルドカットダイヤモンドを贅沢に用い、繊細なセッティングでその特徴である大きなカット面を生かしたリングとブレスレットは、グラフの誇る世界随一のダイヤモンドの調達力がなければ、製作することさえできない逸品なのである。