3. スーパーヒーローに匹敵する細胞修復力
比較的知られていないシャコの能力の1つが、並外れた細胞修復能力だ。シャコをはじめとする甲殻類は、自然の生息地では紫外線にさらされやすい。紫外線は、細胞の組織、特にDNAにダメージを与えることで知られている。それでも、シャコの場合は、紫外線のダメージをほとんど、場合によってはまったく受けていないように見える。複数の研究により、シャコは紫外線を受けることによって引き起こされるDNA損傷を修復する、特別な能力を持つタンパク質を持っていることが判明した。また、学術誌『ACS Omega』で2020年2月に掲載された論文によると、このタンパク質によって病気への抵抗力も備わっているという。
当然のことだが、これらのタンパク質が効率よく機能する仕組みは、ヒトのDNA修復メカニズムを研究している科学者からも注目を集めている。シャコが自身の体の細胞を修復する仕組みを理解し、解析すれば、がんの治療から、宇宙放射線にさらされる宇宙飛行士の防御、さらには、加齢による変化を巻き戻すことさえ可能かもしれない。
多くのイノベーションの鍵を握る、シャコのスーパーパワー
シャコは、単なるカラフルな海生生物という枠をはるかに超えた生き物だ。現実離れした視覚能力ひとつとっても、科学者がここからヒントを得て、がんの早期検出につながると期待される超高感度カメラの開発につながっている。シャコのパワルなパンチと並外れた細胞修復能力も今後、科学やテクノロジー関連のイノベーションのヒントとなるかもしれない。
研究者たちが研究を続けるなかで、シャコが持つ能力の全貌が明らかになってきている。いわばこれは、科学の進歩が、まったく思いもしなかったような場所(このケースでは海の底)から訪れることを示す好例と言えるだろう。
(forbes.com 原文)