つまりシャコは、他の捕食者や、エサとなる動物たちには見えないものを見ることができるということだ。例えば、特定の種の魚の体にある、光を反射する模様や、水面に反射した偏光などだ。
この唯一無二の能力は、イリノイ大学内のグレインジャー工科大学に所属する科学者によって研究・活用され、色彩と偏光の向きの両方を検知できる超高感度カメラの開発に結びついた。これを患者に用いれば、初期のがんを発見する確率の向上も期待されている(偏光を感知できる能力が、どうやってがんの検出に結びつくのかというと、急速に増殖する無秩序ながん細胞は、正常な細胞とは光の反射の仕方が異なる。初期段階のがんでも、この偏光反射に違いが生じるからだ)。
2. ガラスの水槽も破壊する強力なパンチ力
シャコのパンチには、信じられないほどの力がある。シャコの攻撃は通常、刺撃(spearing)と打撃(smashing)の2種類に分かれている。打撃を得意とするタイプのシャコは、こん棒状の捕脚を使って、動物界で一二を争うほど強力なパンチを繰り出す。こうしたパンチのスピードは秒速23m(時速80km超)を超えるとされ、この時生み出される力は、拳銃から発射される銃弾くらいパワフルだ。その衝撃は、シャコの大好物のカニや貝類の殻を簡単に破壊してしまうほど強い。
このパンチのさらに驚くべき点は、飼育されている場合に、ガラスの水槽を破壊するほどの力があるということだ。そんなことが可能なのは、打撃の直接的な衝撃だけが破壊的な力を持つわけではないからだ。このパンチは超高速で繰り出されるため、圧力差によって、短時間に小さな泡の発生と消滅が生じる、キャビテーションと呼ばれる現象が起きる。これらの泡が破裂するときには二次的な衝撃波が発生し、これが当初の打撃の衝撃と同じくらい破壊的な力を持っている。