第1は「道府県の権限の限界」。道府県に財源と権限が委譲されていないため、政府から交付される予算に頼り、政府の方針に沿った政策で動く発想を脱せない。そのため、地方創生を主体的に牽引すべき自治体の力が十分に発揮できていない。
第2は「地方議会の古い発想」。地方議会の政治家の新陳代謝が進んでおらず、若者の地方離れもあり、地方活性化の新たな発想が生まれてこない。
第3は「住民参加の政策不在」。地方創生を進めるためには、住民が主体となって地域起こしに取り組むことが不可欠だが、その政策が存在しない。
では、この状況を打破するために、具体的に、どのような改革をするべきか。本稿では、海外の事例に学びながら、大胆な改革案を、3つ提言したい。
第1は、知事の国政参加の仕組みを作ること。
数年前のコロナ危機の時期を振り返るならば、中央行政が危機対応に手間取っている間に、危機対策に俊敏に動いた知事は、全国に数多くいた。
これは、日々の行政を通じて、地域の住民に密着し、地域の課題を熟知し、問題解決に取り組んできた知事だからこそできたことである。されば、石破新総理は、全国の優れた知事の知見や能力を、もっと国政に積極的に活用すべきであろう。
その一つの方策が、フランスでは長年実施されている制度であるが、知事が閣僚や国会議員を兼務できるように法改正することである。この改革は、道府県が中央行政に従属する文化を壊す一手になる。
そして、そこに向かう一歩として、石破新総理は、地方創生において優れた発想と実績、行動力のある知事を5名程度選び、総理のブレーンである内閣官房参与に任命し、官邸に総理直轄で動く「地方創生ブレーン室」(仮称)を設置することである。
これによって、地方直結・官邸主導の地方創生を推進できるが、加えて、もう一つメリットがある。
そもそも、都道府県知事とは、住民からの直接選挙で選ばれたリーダーであり、すべての行政課題に処する知見を育み、経験を積む立場である。
米国では、歴史的に、州知事を務めた人物が大統領になることが多いが、日本でも、知事という立場で幅広い行政経験を積んだ国家リーダーが生まれる仕組みがあっても良い。現在の国会には、国民生活の現実を知らず、行政運営の能力を持たない議員が増えているが、この制度改革は、国家リーダーの新たな育成方策としても、有効であろう。