宇宙

2024.10.16 17:00

ハロウィーンの「もう1つの彗星ショー」は絶望的か 分裂の可能性が浮上

南米チリで2024年10月11日にディープ・ランダム・サーベイの0.43m望遠鏡がとらえた彗星「C/2024 S1(ATLAS)」(アトラス彗星)の姿(Exoplanetaryscience via Wikimedia / https://commons.wikimedia.org/wiki/File:C2024S1_20241011.png)

チャン博士はアトラス彗星について「太陽に非常に近い軌道を通るため、大きな核の奥深くに守られていない塵や破片は、太陽接近時に完全に昇華してしまう」「核が近日点を生き延びた場合にのみ、特筆に値するような天体ショーが見られるだろう。オール・オア・ナッシング、二者択一だ」と説明した。
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近日点を生き延びるのに十分な大きさの核が残っているかどうかは、あと1週間もあれば判明する可能性がある。ただ、28日当日になってみないと天文学者にも確実なことは言えないかもしれない。

米アリゾナ州フラッグスタッフ郊外にあるココニーノ国有林の上空で残照に輝く紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)(Shutterstock.com)

米アリゾナ州フラッグスタッフ郊外にあるココニーノ国有林の上空で残照に輝く紫金山・アトラス彗星(C/2023 A3)(Shutterstock.com)

彗星は崩壊しやすい

アトラス彗星が見舞われている可能性のある現象は、決して珍しいものではない。「彗星は人々が考える以上に壊れやすい。太陽の近くを通過する際に、核内部の水氷や一酸化炭素、二酸化炭素といった揮発性物質への影響が免れないからだ」と、米航空宇宙局(NASA)のマーシャル宇宙飛行センター(アラバマ州ハンツビル)で隕石環境室を率いる天文学者ビル・クックは指摘する。「1973年に太陽系に飛来したコホーテク彗星は、太陽に近づきすぎて分裂した。2013年のアイソン彗星も同様に、近日点通過時に太陽の強烈な熱と重力に耐えきれなかった」

この事実は、私たちが今、紫金山・アトラス彗星を観測できていることを当然のように考えてはならない理由の1つでもある。肉眼で見える彗星というのは、とにかく珍しいのだ。そして、紫金山・アトラス彗星を見るというのは間違いなく希少な体験といえる。何しろ、この彗星が次に太陽系に戻ってくるのは8万年後なのである。
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forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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