ウクライナには3週間ほど前、ベルギー、デンマーク、オランダ、ノルウェーから約85機が供与されることになっているF-16の第1陣の到着が公表されていた。これらの機体は以前にデンマーク空軍で使われていたものだ。
エストニアのアナリスト、アルトゥール・レヒは「F-16が戦闘を行っているようなのはとても喜ばしいことだ」とコメントしている。
ウクライナ空軍がこの機敏な戦闘機を防空任務に就かせるつもりであることは、早い時点でわかっていた。赤外線誘導のAIM-9サイドワインダー空対空ミサイルと、レーダー誘導のAIM-120 AMRAAM(アムラーム)空対空ミサイルを搭載して飛行するF-16の画像が公開されていた。また、ウクライナの保有する最も優れた西側製対レーダーミサイルやGPS(全地球測位システム)誘導滑空爆弾に広く対応しているにもかかわらず、こうした空対地兵器を装備した姿はこれまで確認されていない。
ウクライナ空軍がF-16に空中哨戒・迎撃任務をあてがうのは理にかなっている。ウクライナはロシアによる執拗で容赦のない空からの攻撃を受けており、ウクライナ軍はその迎撃のためにあらゆる兵器を動員しているからだ。
26日未明から朝にかけての攻撃は、ロシアが拡大して2年半たつ戦争で最大規模のものだった。ロシアは軍艦や重爆撃機、地上の発射機からウクライナの首都キーウをはじめとする都市に向けて、弾道ミサイルと巡航ミサイルを計127発、自爆型のドローン(無人機)を109機発射したとされる。電力インフラが被害を受けて広範囲で停電が発生し、死者も27日までに少なくとも10人にのぼっている。
それでも被害は抑えられたほうだった。ウクライナ空軍はミサイル102発、ドローン99機を撃墜したとしている。ウクライナは防空網の強化に懸命に取り組んでいて、長距離地対空ミサイルシステムのほか、機関銃で武装したトラック、機関銃を撃つ射手を乗せた練習機や軽量スポーツ機、ヘリコプターなども活用している。そして新たな防空戦力としてF-16も加わった。
1980年代製の機体を近代化改修したウクライナ空軍のF-16は、防空という役割に十分な装備が整っている。1990年代に開発されたAIM-120Bは機首の小型レーダーで誘導され、最大65kmほどとみられる射程がある。より接近した空中戦闘用に、1980年代に採用されたAIM-9L/Mも搭載し、赤外線誘導で数km先の空中目標を攻撃できる。
これらの空対空ミサイルは最新のものではないものの、信頼性が高く、ウクライナの支援国に豊富な在庫もある。ウクライナ空軍はF-16の兵装に関しては、向こう1年に第2陣以降のF-16が順次届いても不足することはなさそうだ。