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ヘルスケア

2024.08.19 14:00

アルコールが「飲まない人」に及ぼす害、飲酒する人より大きな可能性

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アルコールは、実際に飲酒する人よりも、飲んでいない人に大きな害を与える可能性があることが、学術誌『Addiction』に掲載されたニュージーランドの研究で示された。

研究チームは、ニュージーランドの入院記録と調査データからアルコール関連の障害や早死によって失われた健康寿命の年数を推定した。研究によると、ニュージーランドでは2018年に、アルコールが原因で7万8277年分もの健康寿命が失われた。このうち90%以上が胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)によるもので、6.3%が交通事故、3.4%が暴力によるものだった。

注目すべきは、実際にアルコールを飲んだ人よりも、飲んでいない人の健康寿命が1万8000年分多く失われた点だ。アルコールに関する研究の大半は主に飲酒した人への悪影響についてだが、前述の研究は、飲酒しない人であっても飲酒者から直接または間接的にアルコールの有害な影響を受けることを浮き彫りにしている。

アルコール摂取で健康を害することはよく知られており、これだけなら安全という量はない。米公衆衛生協会は、アルコールには健康上の利点はないと指摘している。米疾病予防管理センター(CDC)によると、飲酒は高血圧、心臓病、肝臓病、免疫力の低下、うつ病や不安症などの精神疾患につながる可能性がある。また乳房や口腔、結腸、肝臓、直腸などさまざまな部位のがんとも関連している。

アルコールが飲酒者に及ぼす影響よりも、飲酒していない人に及ぼす影響の方が深刻な場合もある。前述の研究では、健康寿命の大半がFASDによって失われている。同障害は母体にいる赤ちゃんが母親の飲酒でアルコールにさらされて起こるものだ。

FASDの症状は、その子どもは出生時の頭は小さく、身長が平均より低く、体重も少ない。また、記憶力や協調性に乏しく、注意力に欠け、言語能力の発達に遅れがみられることがある。加えて視力や聴力、心臓や腎臓にも問題を抱えることがある。現在のところ治療法はないため、FASDを持って生まれた人は生涯この病気と付き合っていくことになる。米小児科学会は、米国では毎年4万人がFASDを持って生まれてくると推定しており、これらはすべて禁酒によって完全に防ぐことができたはずだ。

アルコールを原因とする交通事故もまた、生命を大きく脅かしている。米運輸省の道路交通安全局(NHTSA)によると、米国では毎日37人が飲酒運転による事故で死亡している。

アルコールが飲酒しない人にもたらす破壊的な影響には暴力もある。性的暴行や親密なパートナーからの暴力、殺人、自殺などだ。アメリカン・アディクション・センターによると、米国では毎年推定8万8000人が飲酒関連の暴力で命を落としている。

アルコールは文字どおり社会に壊滅的な影響を与えており、米国では依然として予防可能な死因の最たるものだ。当人だけでなく、周囲の人にとっても、有益なアルコール摂取量というものはない。アルコールが個人と社会の両方に及ぼす公衆衛生上の影響を考えると、世界中で毎年300万人の命を奪っているアルコールとの関係を見直す時期に来ているのかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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