警備支援の要請は1月に行われたが、ウクライナと中東で今なお続く紛争、そしてテロの脅威の増大による安全保障上の懸念と重なった。フランスは毎日4万5000人の警官と警備員、2万人の民間警備スタッフ、1万5000人の兵士を配備している。これまでに35カ国が支援要請に応じ、探知犬やドローン対策の専門家、文書偽造の専門家などを派遣している。
警備態勢は国際色豊かなものになっている。アラブ首長国連邦(UAE)の警察支援チームは、オリンピックの安全確保でフランス警察を支援する任務を開始した。女性職員や警察犬班、警備専門家を含む高度な訓練を受けた警官で構成され、パリ市内のさまざまな会場や人々が集まる場所での警備を支援している。
他にも多くの国が大きく貢献している。スペインが派遣した警官らは7月11日からパリの街をパトロールしている。フランス内務省の治安国際協力局(DCIS)はモロッコ、チリ、カナダ、韓国、ブラジル、そして欧州31カ国など約40カ国から派遣された警官1800人の配備を采配している。
大規模なテロ攻撃が主な懸念事項だが、パリでは最近、特に高級店を狙った武装強盗や小売店での窃盗が目立って増えている。大きな事件としては、ヴァンドーム広場にあるブルガリの旗艦店で1000万ユーロ(約16億円)相当の宝石が盗まれ、ハリー・ウィンストンの店舗でも同様の事件が起きている。パリでは高級小売店で武装強盗が多発する傾向にある。
加えて、パリ、特に観光客が多く訪れる地域では万引きや窃盗が依然として懸念材料となっていることが一般犯罪の統計で示されている。2023年にはパリにあるショーメとシャネルの店舗も狙われた。シャンゼリゼ通りに近いショーメの店舗では7月に約250万ドル(約3億6600万円)相当の商品が盗まれ、シャネルの店舗は武装した4人組に襲われた。
厳重な警備体制が敷かれ、大勢の観光客が押し寄せることから、パリの小売店にとっては一足早いクリスマスのような、売り上げを伸ばす絶好の機会に見えるかもしれない。大規模なスポーツイベントではそれなりのロジスティクス上の問題が発生し、街中の移動も難しくなるが、パリの小売業者も消費者もセキュリティ強化策を受け入れると予想されていた。