支援諸国は、ロシアが2022年2月にウクライナで拡大した戦争をエスカレートさせる危険があるとして、一貫して拒んできた。
ウクライナ側はしびれを切らし、使用制限のない自国製弾薬を使ってロシア領内の最も脆弱な飛行場に対する攻撃を強化している。3日にはウクライナのドローン(無人機)が、東部の前線から320kmほど離れたロシア南西部ロストフ州のモロゾフスク空軍基地を襲撃した。
ウクライナ国防省情報総局の発表によると、ロシア空軍のSu-34戦闘爆撃機1機を撃破し、同2機を損傷させたほか、弾薬庫を破壊した。情報総局は襲撃後のモロゾフスク空軍基地の衛星画像も公開し、弾薬の誘爆によって「広大なエリアが焦土になった」と報告している。
ウクライナによるモロゾフスク空軍基地に対する攻撃は初めてではないが、今回の襲撃は最も大きな損害を与えたもののひとつになった。とはいえ、ウクライナ側にとっては手放しでは喜べない成功だった。ロシア側は軍用機をより攻撃を受けにくい基地に移すようになっており、ウクライナ側が今回のような攻撃を成功させるのは以前より難しくなってきているからだ。
情報総局がこうした襲撃で何を達成しようとしているのかは明白だ。モロゾフスク空軍基地など国境近くの飛行場への攻撃によって、ロシア軍による滑空爆弾爆撃を可能にしている爆撃機と滑空爆弾自体を破壊することだ。
ロシア軍は昨年に初めて粗製の滑空爆弾を投下して以降、衛星誘導する航空爆弾を本格的に採用するようになった。ウクライナ側で「KAB」と呼ばれているこの急ごしらえの滑空爆弾は、展開式の翼のおかげで40km以上の射程がある。そのため、Su-34はこの爆弾をウクライナ側の最も高性能な防空システムの射程圏外から、ウクライナ軍の陣地やウクライナの都市に向けて発射できる。