「KABは精確でないことも多いが、その弾薬はたとえ目標に直撃しなくても、建物を粉砕したり深刻な損害を与えたりするのに十分な威力がある」とフロンテリジェンス・インサイトは解説している。「建物が崩壊すると人員は地下室に閉じ込められ、救助活動が困難になる。ロシア軍がダブルタップ、トリプルタップの攻撃を重ねる場合はとくにそうだ」
市街地の破壊兵器として滑空爆弾は、ロシア側が最近、1000kmにおよぶ前線で収めたほぼすべての勝利で決定的な要因になっている。「(昨年の)バフムート戦のように、過去には、ロシア軍の大砲が防御部隊に撤退を強いるほど建物を破壊するには何日もかかることもあった。それがいまでは、どんな建物も秒単位で崩壊してしまうので、防御目的には役立たなくなっている」(フロンテリジェンス・インサイト)
爆撃機や滑空爆弾、あるいはその両方を破壊してロシアの滑空爆弾爆撃を鈍らせることは、ウクライナの政府・軍にとって最優先課題のひとつだ。
今夏これより前、ロシア空軍の第47親衛爆撃機航空連隊は、ウクライナとの国境から150kmかそこらしか離れていないロシア南西部ボロネジ州のボロネジ・マリシェボ航空基地に、保有する約100機のSu-34のうち数十機を屋外駐機させたことがあった。これはウクライナにとって、ロシアの滑空爆弾インフラに大打撃を与えるまたとない好機だった。
ボロネジ・マリシェボ航空基地はかなり防御が堅いので、ウクライナ側は米国製のATACMS弾道ミサイルの使用許可を米国側に要請した。ウクライナ軍が保有する最高峰の兵器であるATACMSは迎撃がほぼ困難だ。
しかし米国のジョー・バイデン政権は拒否した。国家安全保障担当のジェイク・サリバン大統領補佐官は7月、「われわれの方針は変わっていない」と記者団に語っている。ウクライナがATACMSで攻撃できるのは引き続き、ロシアの占領下にあるウクライナ領内までに制限されているということだ。