食&酒

2024.08.06 13:30

ビールに「塩」を加えると味が良くなる その理由と歴史

ビールに塩を加える習慣は古代にまで遡ることができる(Shutterstock)

ビールに塩を加えると味が良くなるのだろうか? 安物のビールが高価なビールのような味になるのだろうか?

ビール大手ハイネケンの傘下に属するイタリアのビール会社Birra Moretti(ビッラ・モレッティ)はそう考えているようだ。同社は「Sale di Mare(サーレ・ディ・マーレ、海の塩という意味)」という名前のビールを販売しており、アルコール業界誌『ドリンク・ビジネス』は「無濾過のビッラ・モレッティのラガーだが、かすかに海塩を感じる」と、このビールを評している。

実際に、ビールに塩を加えると味が良くなり、安物ビールがもっと高価なビールのような味になる。しかし、この行為は新しいものではなく、古代から行われている伝統だ。この記事では簡単な歴史とビールに塩を加えることの科学的な理由を紹介しよう。

塩はビールに含まれる他の風味に対する味覚を高め、それらをより際立たせる。麦芽の甘みを際立たせ、苦みを抑え、通常では気づきにくい微妙な味わいを引き出すことができる。多くのバーやパブで客に塩味の効いた軽食を出すのは、それが1つの理由だ。

塩はホップの苦み成分を和らげ、苦さを感じにくくする。これによって特にホップの使用量が多いビールは、苦みの少ない味を好む人々にも飲みやすく感じられるようになる。

塩をビールに加えると、砂糖を増やさずに甘みを増すこともできる。麦芽の自然な甘みを引き出し、よりバランスの取れた味わいになる。

塩はまた、ビールの口当たりを良くし、滑らかでクリーミーな食感が増す。これによってビールはより濃厚に感じられるようになり、満足感が高まる。

塩には保水作用もあるため、ビールによる喉の渇きをいやす効果が高まる。それによって、特に夏の日中に飲むビールは爽快感が増す。

アルコール飲料に塩を加える習慣は古代にまで遡ることができる。古代エジプト人やローマ人は味わいと保存性を向上させるためにビールやワインに塩を入れていた。ケルト人が渡来したブリテン島からバビロンまで、欧州や中東全域で行われていた一般的な習慣だった。

ドイツのゴスラーが発祥とされる「ゴーゼ」スタイルのビールは、塩入りビールで最も有名な例だ。ゴーゼは、大麦麦芽に加えて小麦麦芽を使った上面発酵で造られるビールで、伝統的に大量の塩とコリアンダーが加えられ、それが独自の爽やかな味わいを与える。16世紀に生まれたこのスタイルは、現在も人気がある。

20世紀中頃には、ビールに塩を加えるのが米国の特に南部のバーでは一般的だった。風味を高め、苦みを減らし、泡立ちをよくするために、客はビールに1つまみの塩を振りかけた。
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翻訳=日下部博一

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