食&酒

2024.08.10 14:15

創業者の名を冠したワイナリーを新設 「KRUG」が誇るブレンディングの世界

クリュッグ創業者のヨーゼフ・クリュッグ(Joseph Krug)の肖像画を持つ、現当主オリヴィエ・クリュッグ(Olivier Krug)氏

シャンパーニュを語るとき、クラフトマンシップ(職人技)やサヴォアフェール(巧の技)という言葉が思い浮かぶ。シャンパーニュは、複雑で多岐にわたる工程と無数の選択の積み重ねによって造られる。造り手それぞれの歴史と伝統、経験と知見、哲学とヴィジョンの上に成り立っているものといえる。

こうした手間暇がかかるシャンパーニュ造りの工程において、要となるのが「アッサンブラージュ(ブレンディング)」だ。

ブレンドされるのは、ブドウ品種、ブドウが育つ場所、醸造手法などが異なる様々なワイン。場合によっては、収穫年の異なるワインのブレンド、すなわち、最新の収穫年のワインにリザーヴワインという過去のワインをブレンドすることがある。このカテゴリーは、NV(non-vintage)またはMV(multi-vintage)と呼ばれ、シャンパーニュ全体の生産量においても約8割を超え、産地を代表するものだ。
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過去のワインをブレンドする理由はいくつかあるが、冷涼な気候で必ずしも成熟したブドウが収穫できないワイン産地で、毎年一貫した品質と量を確保するという、シャンパーニュの人々の英知に違いない。

このMVカテゴリーで、最高クラスの一つが、プレステージのシャンパーニュ メゾンであるクリュッグの「グランド・キュヴェ(Grande Cuvée)」だろう。

ファミリーのストーリーがその始まり

クリュッグは、1843年にヨーゼフ・クリュッグにより設立された老舗メゾンだ。何世代にもわたり創業者の理念が受け継がれ、現在は、6代目のオリヴィエ・クリュッグ氏が当主を務めている。

オリヴィエ氏は、自身のキャリアを始めたばかりの1990年代に日本に住んだ経験を持ち、親日家でもある。当時の日本では、ワインやシャンパーニュを飲む習慣があまり定着しておらず、同氏は「父の反対を押し切り日本に来ましたが、実際、なかなか売れず、苦しい日々が続きました」と回顧する。

今では、日本はシャンパーニュの世界第3位の輸出市場になり、クリュッグにとってもトップクラスの輸出市場に成長した。オリヴィエ氏と話すと、日本への造詣の深さと思い入れが伝わってきて、温かい気持ちになる。ランス市にあるクリュッグのファミリーハウス。オリヴィエ氏もここで育った。

ランス市にあるクリュッグのファミリーハウス。オリヴィエ氏もここで育った。

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文=島 悠里 写真=メゾン提供、柳 忠之

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