食&酒

2024.08.10 14:15

創業者の名を冠したワイナリーを新設 「KRUG」が誇るブレンディングの世界

クリュッグは、プレステージクラスのキュヴェのみを造るハイエンドに特化したメゾンだ。その中でも、ブランドの顔とも言えるのが「グランド・キュヴェ」。「天候に左右されることなく、毎年最高のシャンパーニュを世に送り出す」という創業者の考えをもとに創り出された作品で、10以上の異なる年のワインを精巧にブレンドして造られる。

例えば、今年リリースのクリュッグ グランド・キュヴェ 172 エディションは、2016年のベースワインを中心に、11の異なる年の146種類ものワインをブレンドして、最終的にピノ・ノワール44%、シャルドネ36%、ムニエ20%の割合で造られたものだ。
エディションが異なるグランド・キュヴェ(Grande Cuvée)。ラベルには、エディション番号が記載されていて、これにより、どの年のベースワインで造られたものかが一目でわかる。また、裏ラベルにあるID番号を、ウェブサイトやアプリに入れると、そのエディションの詳細な情報がわかる。

エディションが異なるグランド・キュヴェ(Grande Cuvée)。ラベルには、エディション番号が記載されていて、これにより、どの年のベースワインで造られたものかが一目でわかる。また、裏ラベルにあるID番号を、ウェブサイトやアプリに入れると、そのエディションの詳細な情報がわかる。

以前、メゾンで、ブレンドの完成形と、それを構成するパーツとなる各ワインを試飲する機会があった。

後者は、異なる村・畑のブドウから造られたピノ・ノワールやシャルドネのワインだったのだが、それぞれ、出身地の場所を表現し、特徴も方向性も違う、個性豊かなワイン。これに対し、約400ものワインのなかから、100種類以上を選択しブレンドしたものは、全体として見事な調和がとれ、一つ一つのワインがなし得る以上の壮大な世界を表現しながら、グランド・キュヴェの一貫したスタイルを体現していた。まさに、シャンパーニュのアッサンブラージュの匠の技に触れ、舞台裏(Behind the scenes)を垣間見る体験だった。
ブレンドの試飲の様子。最新の収穫年である2023年のベースワインを中心に、100種類を超えるワインから成るグランド・キュヴェの179エディションのブレンド。

ブレンドの試飲の様子。最新の収穫年である2023年のベースワインを中心に、100種類を超えるワインから成るグランド・キュヴェの179エディションのブレンド。

音楽にたとえると...

クリュッグにとって、この多層的なハーモニーを奏でるグランド・キュヴェが、シンフォニーであるならば、「ヴィンテージ」はカルテットで、単一畑の単一のブドウ品種から造る「クロ・ダンボネ(Clos d‘Ambonnay)」と「クロ・デュ・メニル(Clos du Mesnil)」はソリストだと言う。

クリュッグでは、シャンパーニュと音楽のミュージックペアリングを開発するなど、音楽や芸術との親和性や相乗効果に注目し、斬新な体験を提案している。ブレンドの工程については、各ブドウ畑を一人の音楽家のように見立て、それらの特性を把握したセラーマスター(最高醸造責任者)のジュリー・カヴィル氏がオーディションさながらワインを選び、そして指揮者のように見事なハーモニーを奏でるブレンドにまとめ上げると表現する。
ジュリー・カヴィル氏。2006年にクリュッグに入社し、2020年にセラーマスターに就任。多彩な顔ぶれの醸造チームを率いる。

ジュリー・カヴィル氏。2006年にクリュッグに入社し、2020年にセラーマスターに就任。多彩な顔ぶれの醸造チームを率いる。

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文=島 悠里 写真=メゾン提供、柳 忠之

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