例えば、今年リリースのクリュッグ グランド・キュヴェ 172 エディションは、2016年のベースワインを中心に、11の異なる年の146種類ものワインをブレンドして、最終的にピノ・ノワール44%、シャルドネ36%、ムニエ20%の割合で造られたものだ。
以前、メゾンで、ブレンドの完成形と、それを構成するパーツとなる各ワインを試飲する機会があった。
後者は、異なる村・畑のブドウから造られたピノ・ノワールやシャルドネのワインだったのだが、それぞれ、出身地の場所を表現し、特徴も方向性も違う、個性豊かなワイン。これに対し、約400ものワインのなかから、100種類以上を選択しブレンドしたものは、全体として見事な調和がとれ、一つ一つのワインがなし得る以上の壮大な世界を表現しながら、グランド・キュヴェの一貫したスタイルを体現していた。まさに、シャンパーニュのアッサンブラージュの匠の技に触れ、舞台裏(Behind the scenes)を垣間見る体験だった。
音楽にたとえると...
クリュッグにとって、この多層的なハーモニーを奏でるグランド・キュヴェが、シンフォニーであるならば、「ヴィンテージ」はカルテットで、単一畑の単一のブドウ品種から造る「クロ・ダンボネ(Clos d‘Ambonnay)」と「クロ・デュ・メニル(Clos du Mesnil)」はソリストだと言う。クリュッグでは、シャンパーニュと音楽のミュージックペアリングを開発するなど、音楽や芸術との親和性や相乗効果に注目し、斬新な体験を提案している。ブレンドの工程については、各ブドウ畑を一人の音楽家のように見立て、それらの特性を把握したセラーマスター(最高醸造責任者)のジュリー・カヴィル氏がオーディションさながらワインを選び、そして指揮者のように見事なハーモニーを奏でるブレンドにまとめ上げると表現する。