こうしたなかで人工知能(AI)は、希望の星として浮上している。AIは、単に進歩のためのツールではなく、複雑なオンライン世界における保護者として、活躍を始めつつあるのだ。
子どもたちにとってもっと安全な環境を作るために、AIがどのように活用されているのか、実際の応用例と、将来への展望を紹介しよう。
AIはデジタルな遊び場の守護者
インターネットは、学習や人とのつながりに役立つあらゆるリソースとチャンスを提供する一方で、若いユーザーにとってのリスクもはらんでいる。AIテクノロジーは、そうしたリスクに対して、用心深い守護者として介入する。人間のモデレーターだけでは不可能な規模とスピードで、オンラインコンテンツを監視・分析するのだ。AIは、有害なコンテンツをフィルタリングし、性犯罪の脅威を検知し、教育リソースを提供することで、デジタルな遊び場の守護者として機能し、子どもたちにとって安全で成長できる空間であり続けることを保証する。
有害コンテンツの検知とフィルタリング
児童保護におけるAIの最もわかりやすく、かつインパクトのある応用例の一つが、有害なオンラインコンテンツの検知とフィルタリングだ。グーグルやメタのような企業は、洗練されたAIアルゴリズムを採用しており、毎日何百万もの投稿・画像・動画をスキャンして、子どもにとって有害になる可能性のあるコンテンツにフラグを付けて削除している。これらのシステムは、膨大なデータセットに基づいて不適切な素材を認識するよう訓練されており、子どもたちが行き来するデジタル空間で性的搾取や虐待がないことを保証している。
ネットいじめにAIで対抗
ネットいじめはオンライン社会に蔓延する問題であり、数え切れないほどの子供や青少年に影響を与えている。AI技術は、積極的な解決策を提供し、テキストメッセージ、電子メール、SNSでのやりとりの中でいじめ行為を特定する。インスタグラムのようなプラットフォームは、攻撃になりそうなコメントを投稿前に検知し、ユーザーに再考を促すAIツールを導入している。このようなAIの応用は、ネットいじめを未然に防ぐだけでなく、若いインターネットユーザーのあいだで優しさと反省の文化の育成を促進する。
児童の性的虐待と闘うAI
児童搾取との極めて重要な闘いにおいて、AIはかけがえのない味方となっている。米国NPOのThornや、全米行方不明・被搾取児童センタ(NCMEC)などの団体は、AIを活用して児童の人身売買や性的搾取の被害者を特定し、救出している。Thornが提供するAIツールのSaferは、テクノロジー企業が児童性的虐待のコンテンツ(CSAM)を特定し、プラットフォームから削除するのを支援する。これらのAIシステムは、画像や動画を大規模に分析することで、被害者の迅速な特定を支援し、被害者の救出と、加害者の逮捕につなげている。
安全なネット利用習慣を育む教育に役立つAI
子どもたちを守るAIの役割は教育にも及んでおり、安全なネット利用習慣を育むためのガイドの役割を果たしている。グーグルが開発した、AIを利用したゲームのInterland(インターランド)は、子どもたちに対して、魅力的でインタラクティブな方法で安全にインターネットを利用する方法を教えている。子どもたちはゲームプレイを通じて、フィッシング詐欺の見分け方、個人情報の安全性、責任あるインターネットの利用方法などを学び、オンラインで自分を守るための知識を身につける。