航空会社がまず考えなければならないのは、選んだそのワインを、必要と思われるだけ調達できるかどうかということだ。だが、長距離路線で乗客が消費するワインの量を、予測するのは難しい。
1回のフライトで、アッパークラスで飲み干されるワインは、平均9~12本だという。また大手航空会社では、特にエコノミークラスに大量のワインを用意しておく必要がある。長距離便ではビジネスクラスだけでも、少なくとも4種類のワインと2種類のシャンパンまたはスパークリングワインをそろえている。
必要量が多いということは、小規模の生産者が手掛けるワインの大半を、候補から外さなくてはいけないということだ。十分な量を入手できない可能性があるほか、生産者側が供給を望まない場合もある。
また、品質と価格、その他の要素のバランスを取る必要があることから、当然ながら購入の決断には、価格も影響を及ぼす。大量購入する航空会社は通常、良い条件での取引を期待できるが、なかには一般市場で、少しずつ販売することを好むワイナリーもある。
一方、機内で飲んだとき、そのワインの味がどのように感じられるかということも、重要なポイントだ。高い高度と低くなる気圧の影響により、白ワインやシャンパンは酸味を、赤ワインはタンニンをより強く感じるようになる。
また、空気が乾燥している機内では、私たちの味覚そのものにも変化が生じ、フレーバーを感じにくくなる。そうした影響は、十分な水分をとり、鼻用の生理食塩水スプレーを使用することなどで、和らげることができる。
ただ、エアバス350など最新型の旅客機は機内の湿度をより高く保てるように改良されている。今後も航空機の進化に伴い、さらに改善されていくことになるだろう。