経済・社会

2024.07.21 11:00

AIブームと気温上昇で世界の電力需要が急増、17年ぶり増加幅に IEA報告

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国際エネルギー機関(IEA)は19日発表した報告書で、気温上昇と経済成長、人工知能(AI)によってエネルギー消費が跳ね上がる中、2024年の世界の電力需要はこの20年ほどで最も急速に増加するとの見通しを明らかにした。同時に、自然エネルギー電源は増加傾向にあるとも指摘している。

電力に関するIEAの中間報告によると、昨年2.5%増だった世界の電力需要は今年、約4%増となる見通しだ。この数字が現実になれば、世界金融危機やコロナ禍の反動で需要が回復した例外的な年を除き、2007年以降で最も大きな増加幅になる。さらに、2025年も4%の増加が予想されている。

気候変動で世界の気温が上昇しているため、エアコンの使用が増え、電力需要増の主な要因となると報告書は指摘している。すでに今年上半期に多くの「猛烈な熱波」が発生し、需要を押し上げて電力系統のひっ迫が起きた。

AIの急速な普及と用途の拡大も、今後数年にわたり電力需要を押し上げると予想されている。ただ、IEAによるとデータセンターがどれだけ電力を食うかについてはまだ不確定要素が大きいという。

電力需要は特にインドで大きく、今年は8%増えると予想されている。また、中国でも6%超の増加が見込まれている。米国では堅調な経済成長やデータセンター部門の拡大、冷房需要の高まりを背景に3%増となりそうだ。

再生可能エネルギーは今年から来年にかけて急増し、世界の電力に占める割合は2023年の30%から2025年には35%になるとIEAは予測している。

AIの消費電力と気候変動への影響

AIが消費するエネルギー量の正確な算出は難しいが、電力消費が大きいことはよく知られている。データセンターの消費電力量に関する信頼できるデータがほとんどないこと、またAIの普及のスピードや程度についても不確定要素が多いことから、AI関連の電力需要を将来にわたって予測するのは難しいとIEAは述べている。
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翻訳=溝口慈子

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