あらかじめ資金が用意されているわけでもなく、スタートアップのように資金調達を試みるわけでもなく、ブロックチェーン(特にEthereum)の思想や活動をリファレンスにし、グラント/助成金を取得しながら進めるプロジェクトの数々はとても面白い。
特に私のようにIBMやAdobeなどクラシカルなグローバル企業あがりの人間からするとDig DAOメンバーの働き方・生き方自体非常に興味深い。お金のために動く、ではなく、自分の思想や興味を軸に動くメンバーを見ていると、スティーブ・ジョブズがウォズニアックと共にガレージでパソコンを作っていた時はこんな感じだったんだろうな、と勝手に過去の偉人と目の前のメンバーをシンクロさせている。
未来を作るメンバー等と一緒に活動することを傍観者として見ていても面白くないので、当事者としてDig DAOのプロジェクトのプロモーションやファシリテーションのロールを引き受けて活動している。
Dig DAOプロジェクトは地域活性を中心とした国内ローカルDAO調査、新たなID認証の仕組みDID/VCなど複数動いているが、今回はデジタル公共財に関するプロジェクトをメンバーの一人高木俊輔氏にフォーカスしながら紹介する。デジタル公共財とは何か? デジタル公共財の資金調達のための「Dig DAOマッチングドネーション」とは何か? そして、今後の展望を高木氏に伺っていく。
──なぜデジタル公共財が必要なのか?
高木俊輔(以下、高木): 最初に、私のバックグラウンドについて軽く説明しておきます。N高在学中の高2の時に「Civichat」というプロジェクトを立ち上げました。最初はシビックテックのプロジェクトとして進めていましたが、課題の大きさとスピード感に限界を感じ、法人化。資金調達も行い、Govtechスタートアップとしてやっていこうとしましたが、うまくいきませんでした。
もちろん自分自身が経営者として未熟だったというのはありますが、公共領域で売り上げを立てるのは至難の業だったのです。その挑戦の中で、公共財を取り巻く課題を目の当たりにしました。
具体的には、公共入札の仕組みの課題、そして、デジタル公共財をどのように構築するかという課題です。
まず既存の入札制度は最も安く入札したところが受注し、行政が定義した要件に基づいて開発しますが、選考において価格面が基準になってしまう。それで良いのでしょうか?もちろん法外価格は良くないですが、私が多く目にした中では「安い」という基準で受託しているケースが多くあり、この現状に疑問を感じました。
また、行政が要件を定義するというのは「市民が求めていたなかったものに資金(税金)を分配する」という問題を引き起こしていると感じています。今後より普及が進む行政関連のデジタルアプリケーションに関しては、より市民参加・支持を前提とした調達が可能だと考えています。