高木: フィジカルな公共財と違って、デジタルな公共財、特に市民が直接触るアプリケーションにおいては、より市民参加を前提とした調達が可能だと思います。加えて、人口減少により公共サービスが縮小する中で、”小さくて細かい 困りごと” 需要が放置されがちです。この状況下では、『大きな政府』は資金的に持続できず、『小さな政府』はそのようなニーズを拾い上げることができません。書籍『次世代ガバメント(若林恵 / 日本経済新聞出版)』で言及されていたこの課題ですが、プラットフォームとしての行政を目指そうとすると、新たなガバナンスのあり方としてEthereumエコシステムが参考になると考えております。
──Ethereumエコシステムに注目する理由を詳しく教えてください。
高木: Ethereumエコシステムでは、独自の通貨を発行し、ガバナンスを行い、公共財を増やすという一連の国家のような流れを高速に実験しています。そこで得られた知見やメカニズムは、行政や地方自治体の課題にも必ず適用できると思っています。
より具体的には、各パブリックチェーンが独自通貨を発行し、徴税の仕組みをスマートコントラクトとして実装できます。例えば、エコステムの1つの「Optimism」というブロックチェーンでは、L2(レイヤー2:Ethereumをスケールさせるための技術の一つ)として手数料を徴収(徴税)した原資を元に「Retroactive Public Goods Funding」と呼ばれる公共財への資金分配を行っており、この構造は国家に似ています。このように、デジタル公共財を構築するためのテクノロジーとして、現在Ethereumエコシステムで起こっていることは非常に興味深いものです。
──Dig DAOでのプロジェクト(Dig DAOマッチングドネーション)とは
高木: Dig DAOマッチングドネーションプロジェクトでは、クラウドファンディングを元にマッチング基金からどれだけの金額を分配するかを決定する仕組みに、Quadratic Funding(QF クアドラティック・ファンディング)を利用しています。この仕組みは、ユニセフやGitcoinなどでも実験的に使用されており、最近では台湾のデジタル庁が法定通貨を使って実験しています。