今年で71年目を迎える本アワードへの応募総数は、2万6753点。部門ごとにグランプリ・ゴールド・シルバー・ブロンズが選出された。現地には世界中から1万5000人ほどの参加者が集まり、登壇したゴールド以上の受賞者の喜びぶりを見ていても、例年にも増して熱気が感じられた。
ゴールド以上を受賞して登壇、喜ぶ受賞者たち(c)佐藤達郎
生成AIの話題が多かった2023年の反動なのか、テクノロジーを駆使するのは当然のこととしたうえで、「人間性」について語られることが多かった。カンヌライオンズ公式の“ラップアップ”と呼ばれる振り返りレポートの冒頭に掲げられたのも、“Humanity & Humour”という言葉である。
Humourに関しては、30部門のうちの半数近くの部門でサブカテゴリーに“ユーモア”カテゴリーが新設され、公式に話題化されていた。ユーモアは人間性の一種として語られていたと思う。
英国航空の常識破りの屋外広告
19回目の参加となった今年は、例年に増して多くの刺激とヒントを受け取って帰国した。その一端を読者の皆様にお届けしよう。カンヌライオンズでは月曜日~金曜日まで毎日19時~21時に、ゴールドとグランプリの受賞作が発表される贈賞式が開催される。今回は、月曜日夜の贈賞式で初日から衝撃を受けたアウトドア部門ゴールド受賞作でBritish Airways(英国航空)の「WINDOWS」を紹介する。
メイン会場とカンヌライオンズ2024のロゴマーク(c)佐藤達郎
このアウトドア広告には、英国航空機の窓から街を見下ろす1人の乗客の姿が映し出されている。飛行機の窓から地上を見下ろす時こそ、飛行機旅行の旅情を最も端的に現わしている、ということだろう。そして、そこにはキャッチフレーズもないし、ロゴはほんの一部しか見えていない。常識破りなほどに“シンプル”である。