掲出場所は、サイズが大きく高い場所にあり、まるで飛行している英国航空機の窓から、乗客が街を見下ろしているように見えるところが選ばれた。ピカデリーサーカスなど一部の掲出場所では、デジタルサイネージを用い、画像に動きも加わった。
掲出された「WINDOWS」(c)カンヌライオンズ
この常識破りのシンプルさには、きちんとした理屈がある。
英国航空にだって、シートの座り心地の良さとか、接客の誠実さとか、運行の正確さとか、伝えるべきことはたくさんある。ただ、主に国内旅行の競争相手を、LCC(ローコストキャリア)と呼ばれる飛行機代の安い会社と想定した時に、逆に“何も言わない”ことを選択した。
つまり、顧客と英国航空とのエモーショナルな絆を深めたり強めたりすることのほうが、価値が高いと考えたのだ。LCCは多くの場合、経済的メリットを主張して、エモーショナルな結びつきや旅情は無視しているから。
また、英国航空くらいの知名度があれば、ロゴマークもほんの一部が見えているだけで、充分に認識される。すべてを完全な形で見せる必要性はない。
結果としてこの広告キャンペーンは、英国内で2600万人にリーチし、広告認知は前年同時期の73%増を記録した。また、多くの人が英国航空機の予約を検討し、ウェブサイト訪問は3万4800を数えた。
発信側が、「喋り過ぎない」「語り過ぎない」こと。“ロゴはしっかり見せなくては!”というように、常識に捉われないこと。生活者に具体的なアクションを直接的に求めることに固執しないこと。この英国航空「WINDOWS」の事例からは、多くのヒントが得られそうだ。