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2024.07.14 10:00

自閉症も多動性も個性であり力 職場を進化させる「ニューロダイバーシティ」

米ハーバード大学の健康情報部門Harvard Health Publishing(ハーバード・ヘルス・パブリッシング)が提唱するように、ニューロダイバーシティとは「思考、学習の方法、行動に『良い』も『悪い』もない」という考え方である。人間の脳や行動特性はそれぞれ異なるのが自然なことなのだ。ニューロダイバーシティの概念は今日、世界人口の10~15%にあたる発達障がい者を就業人口に取り込み、共生社会を実現するための重要な指針となっている。

1. 突出した発想力で問題を解決

ニューロダイバーシティを奨励している職場にはさまざまな恩恵がもたらされるが、それは発達障がい者の持つ「独自の視点」によるところが大きい。特に女性の発達障がい者が持つ独自の思考法や情報処理能力は、さまざまな問題を解決に導くきっかけになる。

米製薬会社Prana Biosciences(プラナ・バイオサイエンシズ)の最高経営責任者、バラット・テワリーは言う。「ニューロダイバーシティは企業にとって、イノベーションや互いを尊重する環境作りに欠かせない概念です。特に女性の発達障がい者による多様なアプローチは、画期的な解決策を導き出し、チーム全体の問題解決能力を高める可能性があります。こういった新しい視点を受け入れることで豊かな企業文化が育ち、中でもバイオテクノロジーのような創造性と精密な作業が求められる分野でプラスの変化が見られるでしょう。企業がニューロダイバーシティを奨励することは、個人と組織の双方にとって極めて有益ですが、最終的には社会全体の利益にもなります」

思考の多様性は、例えば製品開発、販売促進、リスクアセスメント(リスクの特定、分析、評価)、財務分析など、鋭い視点を必要とする複雑なタスクに取り組む際の強い武器となる。こうしたさまざまな角度からの視点は、これまで見過ごされていた商機の特定や独創的な戦略策定も可能にするはずだ。

さらに、メンバーの思考が似ているチームにとっては、これまで想像もしなかった新鮮な分析を目にする機会になるだろう。発達特性を持つ社員による分析が新たな解決法を導き出し、皆の想像力を刺激し、それが自由な発想を奨励する企業文化を育むことにもつながる。

2. 発達障がい者ならではのコミュニケーション方法

良好なコミュニケーションは仕事を円滑にし、特にチームワークには欠かせない。ニューロダイバーシティを奨励する職場では、発達特性を持つ社員による斬新なアプローチがきっかけとなり、問題についてのより深みのある議論や、より幅広い視点からの取り組みが促進される。

発達障がい者は独自の方法で情報を処理するが、その独自性は「情報の表現」にも及ぶ。発達特性を持つ女性の中には、情報をさまざまな角度から情報を引き出す能力に優れた人材がおり、その独特の視点が問題の包括的な理解を後押しする。
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翻訳=猪股るー

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