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2024.06.17 15:00

テンセントやソフトバンクも支援する「AI創薬スタートアップ 」が香港で上場

Shutterstock.com

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中国・深センに拠点を置くAI創薬のスタートアップ、Xtalpi(晶泰科技)は6月13日、香港市場で新規株式公開(IPO)を行った。初日の株価は上昇し、時価総額は25億ドル(約3935億円)に達した。

Xtalpiの株価は、13日に一時24.6%急騰し、公募価格の5.28香港ドルを9.8%上回る5.8香港ドルで初日の取引を終えた。AIと量子物理学を用いて新薬の開発を行う同社は、上場によって9億8930万香港ドル(約199億円)を調達した。

Xtalpiは目論見書の中で、IPOで調達した資金を研究開発やAIと量子物理学の技術開発、米国・欧州・東アジア(特に香港)・東南アジア・中東への事業展開に充てると述べている。

香港証券取引所は、低迷するIPO市場を活性化させるため、時価総額や売上高が小規模なテクノロジー企業のための新たな上場ルールを1年以上前に導入したが、Xtalpiはこの新ルールの下でIPOを果たした最初の企業となった。

Xtalpiは、2015年の設立以来、総額7億3200万ドル(約1152億円)の資金を調達し、最も資金力のあるAI創薬スタートアップになったと述べていた。目論見書によると、同社は2021年10月のシリーズDラウンドで、約20億ドル(約3148億円)の評価額で3億8000万ドル(約598億円)を調達していた。

Xtalpiの投資家には、テンセントや、中国の著名投資家ニール・シェンが率いるホンシャン(旧セコイア・チャイナ)、5Yキャピタル、グーグル、サスケハナ・インターナショナル・グループ、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2などが含まれる。

マサチューセッツ工科大学出身の3人の中国人量子物理学者、ウェン・シュハオ、マー・ジアン、ライ・リペンが創業したXtalpiは、AIや量子物理学、クラウドコンピューティング、ロボティックオートメーションを組み合わせ、新薬候補となる可能性が高い新規分子を発見している。フロスト&サリバンによると、他のAI創薬企業が有望な分子の特定に10カ月を要するのに対し、Xtalpiは2カ月未満に短縮したという。

Xtalpiは最近、農業や化粧品、ヘルスケア、石油化学、電気自動車用バッテリーの新素材といった用途向けに新規化合物を発見する事業に参入した。同社は、2023年の創薬と自動化ソリューションによる収益が前年比30.8%増の1億7440万元(約38億円)になったと発表し、その理由に顧客数の増加を挙げている。
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編集=上田裕資

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