いまや多くの消費者やセレブリティたちの「ファッション・ステートメント」となった「醜い」を意味する「ugly(アグリー)」なシューズに対する見方を変えたのは、各ブランドのマーケティング戦術のおかげでもある。だが、それ以上に大きな役割を果たしたのは、消費者の嗜好の変化だ。
調査会社GlobalData(グローバルデータ)のマネージングディレクター、ニール・サンダースによると、アグリーなシューズのトレンドを後押ししたのは当初、「スタイルより快適さが求められた」ことだった。そして、その後に発生した(新型コロナウイルスの)パンデミックが、その傾向をさらに強めることになった。
「時代の流れとともに、こうしたシューズの多くはある種のステートメントとなってきました。ファッションや文化のトレンドになってきたと言えます」
「多くの人が、自分自身や流行をそれほど真剣に受け止めていないように見せるために取り入れた、『アンチ・ファッション』のスタイルでした」
こうした変化について、市場調査会社Circana(サカーナ)のアナリスト、ベス・ゴールドスタインは次のように述べている。
「いまやスタイルのために快適さを犠牲にすることは、ばかげたことのように思われています。それが、『アグリー=ファッショナブル』という見方に変化したのです」
変化を後押しするZ世代
このトレンドは特に、若い世代の共感を呼んでいる。ブランドのマーケティング戦略の構築を支援するLaunchmetrics(ローンチメトリクス)によると、Ugg(アグ)やビルケンシュトックなど快適さを重視するシューズブランドの需要は、快適さを何より優先するZ世代の間で特に増加している。また、「Media Impact Value(メディアインパクト・バリュー、メディアへの露出がもたらす金銭的価値)」は2020年以降、200%近く上昇しているという。
また、米投資銀行Piper Sandler(パイパー・サンドラー)の調査によれば、Z世代の間では2022年秋から23年春にかけて、ニューバランスやクロックス、オン、ホカといった「ナイキ以外」のブランドが、依然として認知度、人気ともにトップのナイキから、そのシェアの一部を奪っていた。