欧州

2024.06.07 10:00

ジャマーてんこ盛りの「ツァーリ・タンク」、ウクライナ軍に鹵獲され再就役

2017年5月、ロシア・モスクワの道路を走るT-72B3M戦車=シャッターストック

4月上旬、ウクライナ東部クレミンナのすぐ西のテルニ村付近で、ロシア軍の突撃部隊がウクライナ軍の第12特務旅団アゾフ(通称「アゾフ旅団」)の保持する陣地を攻撃した。

攻撃はいつもと同じように終わった。車両は地雷で爆破され、ウクライナ軍のFPV(一人称視点)ドローンを食らった。生き残ったロシア兵は車両を捨て置き、数百m東の自陣へ退却した。

いつもと違っていたのは、あとに残された車両だった。ほぼ原形を保った新しいT-72B3M戦車が1両あり、それにはやたらと大きな対ドローン用ジャマー(電波妨害装置)が備え付けられていた。ジャマーはこの戦争でかつて見られなかったほどの大きさで、とくに性能の高いものなのかもしれなかった。

アゾフ旅団はこの戦車を鹵獲すべく3夜にわたって大胆な任務を行った。戦車の状態を調べ、走行できるようにしたうえで、奪い取ることに成功した。2カ月後、ジャマーを取り除かれ、点検・修理され、アゾフ旅団のマークを塗装された重量46tの2022年型T-72B3Mは、鹵獲に貢献した戦車大隊に配備された。

この戦車はウクライナで「ツァーリ・タンク(皇帝戦車)」、付いていた山のようなジャマーは「ツァーリの電子戦システム」と呼ばれている。ちなみにアゾフ旅団ではロシア軍から鹵獲したT-72B3Mがもう1両就役している。

ウクライナの著名な戦場記者ユーリー・ブトゥソウは最近、アゾフ旅団の名高い戦車長、コールサイン「クリム」をインタビューしている。ロシアが2022年2月にウクライナで拡大した戦争の初期に、南部の都市マリウポリの防衛戦で片目を失ったクリムはそのなかで、ツァーリ・タンクの壮絶な強奪について詳しく語っている

「この戦車はなぜ有名なのですか」というブトゥソウの質問に、クリムはこう答えている。「この種の戦利品は戦争全体を通じて初めてのものでした。【略】横にバッテリーを増設した巨大な電子戦システムが、海賊船のようにロープでくくりつけられていたんです」
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翻訳・編集=江戸伸禎

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