テクノロジー

2024.06.05 17:45

部屋中どこでもワイヤレス給電 電源ケーブルから解放される日

プレスリリースより

カフェで仕事をしたいとき、コンセントの近くの席を探したりするが、そんな時代はもうすぐ終わる。現在、総務省が推進している空中伝送型ワイヤレス電力送電システム(WPT)の研究において、基礎技術が開発された。

WPTの用途は、ひとつにはIoT機器への給電がある。現在、IoT機器の電源は電池または電源ケーブルで供給されるため、電池交換やケーブルの配線の必要性から設置場所が大きき制限されてしまうのだが、WPTならその心配がなくなる。もっと身近なところでは、スマホやパソコンの無線充電だ。

だが、WPTに割り当てられている電波帯は、920メガ、2.4ギガ、5.7ギガヘルツの3つで、 いずれもWi-Fiやドローンの操縦など幅広い用途に使われているもの。WPTで大きな電力を送信するとなると電波を強くしなければならず、これらの電波に干渉して通信状態を悪化させてしまうという課題があった。

そこで、WPTと他の通信用電波とを共存させる技術が求められていたのだ。総務省の委託を受けて2022年から研究を続けてきた、1950年創業の電気通信機器の老舗、電気興業は、まずWPTの安定的な給電技術を確立し、鉄道模型を使ってそれを実証した。鉄道模型の車両に向けて、3〜7メートル離れた場所からWPT電波を送信して車両を走らせたのだが、車両は4本の受信アンテナで合計2ワットの受電が可能になっていた。送信側のアンテナは、家庭用無線ルーターにも使われているビームフォーミング技術により、動く車両を追跡して安定的に電力を送信した。

次はWi-Fiなどとの干渉の抑制だ。電気興業は、USB充電が可能になる7.5ワット程度の無線給電の実現に向けて2025年度までの研究を続けるとしている。WPTでのUSB給電が実現し普及すれば、カフェや新幹線の中でも電源ケーブルを使わずに安心して仕事ができるようになるだろう。総務省は、2030年にはEVや家電もWPT対応になると予測している。電源ケーブルから解放される日が待ち遠しい。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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