この滑空爆弾は重量が1t以上あるものもあるとみられ、命中精度は照準点から数十m以内と推測される。ウクライナ軍の第3独立強襲旅団に所属する軍人、イェホル・スハルは「これらの爆弾はどんな陣地も完全に破壊する。建物も構造物もただの穴と化してしまう」と説明している。
ウクライナの調査分析グループ、ディープステートは今年3月、滑空爆弾はロシア軍にとって「ミラクル兵器」になっていると評し、ウクライナ側に「対抗手段はほとんどない」と述べている。ウクライナ空軍が現在75機かそこら運用している旧ソ連製戦闘機は、新型のレーダーや空対空ミサイルを搭載していない。同軍の地対空ミサイルシステムは数が少ないので、すべての都市や軍事拠点を守ることはできない。
F-16がロシア空軍の滑空爆弾搭載機を160km以上離れた空域から攻撃するようになれば、滑空爆弾による爆撃を受けやすい都市や陣地から敵機を遠ざけ、ロシア側のこの強みを初めて損なうことができるかもしれない。
もっとも、そうできるのはF-16が最新型のAIM-120を搭載する場合だけだ。旧型のAIM-120Bの射程は50km程度しかないが、新型のAIM-120Dは160km超にまで伸びている。
米国防総省はウクライナに供与するAIM-120の型式を公表していない。しかしウクライナ空軍のユーリー・イフナト報道官は昨年、「米国はウクライナに射程160〜180kmの(AIM-120)AMRAAM航空ミサイルを供給するだろう」と述べており、AIM-120Dが供与されることを事実上認めている。
4個飛行隊規模のF-16は、戦線のパワーバランスをウクライナ優位に戻す可能性もあるが、いずれにせよそれが一気に起こることはないだろう。F-16は、ウクライナ空軍の老朽化した現有機がオーバーホールされたり、パイロットの訓練を完了したりするのに合わせて、数年かけて少数ずつ導入される方向になっている(編集注:ゼレンスキー大統領によるとベルギーからの30機も2028年までに供与され、今年中に最初分が届くとされる)。
(forbes.com 原文)