一般に、正体の特定できない飛行物体は、「未確認飛行物体」「UFO」との呼称で親しまれてきた。
UFOとは、英文で、「Unidentified Flying Object:UFO」だ。
アメリカ航空宇宙局、UFOの定義を拡大
しかし、アメリカ航空宇宙局は2022年にUFOの定義を拡大、物体以外の自然現象も含められるよう「未確認空中現象」と再定義した。英文では「Unidentified Aerial Phenomena:UAP」となる。同年7月、アメリカ防衛省は「全領域異常解決局(All-domain Anomaly Resolution Office :AARO)」を立ち上げ、本質的なUAP対策を次々と実行している。
2024年3月8日、AAROは、調査の集大成として、報告書「UAP現象に関する米国政府の調査経緯」を発表した。
発表の内容から以下、いくつか引用しよう。
1.地球外技術の存在可能性を否定
まず、約80年以上にわたる政府内情報を分析した結果、「UAP現象と地球外技術との関連性はない」と結論づけている 。
「アメリカ政府が地球外の技術を保有またはリバースエンジニアリングしていることはなく、また、そのような主張を支える証拠はない」。
2.関係者が報告をしやすい環境に:UAP現象増加の背景に計器の測定エラーも
国防等の観点から、UAP現象の重要性が関係者に周知された結果、UAP報告数は増加した。しかしUAP報告の多くは、計測機器の誤作動や精度不足の結果であったことが確認されている。
3.国防省監視官「統一感のないUAP現象調査は危険を招く」
「UAP墜落事故や、墜落に関連したモノに対するリバースエンジニアリングの記録が数十年間隠されている」
元アメリカ国家偵察局職員のデービッド・グリッシュ氏は、2023年7月26日の米国議会の調査委員会にて上記のとおり証言した。
AAROにてその証言内容が慎重に検証されていたが、デービッド氏の発言には、「また聞き」だった可能性があるようだ。
UAP現象調査、統一欠けば「国家の安全保障リスクにも」
アメリカ国防省監査官ロバート P. シュトルヒ氏は、「UAP現象に関する調査は、統一感と透明性を持って実行しないと、国家の安全保障リスクや国家予算を危険に晒す」と結論付けている。2023年8月より、アメリカ国防省はAAROのwebサイトを立ち上げ、透明性のある環境でのUAP現象調査を進めている。
出野宏一(いでの・こういち)◎AYA世代がんサバイバー/中途失声障がい者。総合商社にて法務業務、IT関連ビジネス、プライバシーテックなどを経験。北京大学への留学から帰任後は、ITテクノロジー関連の新規ビジネス創出を担当していた。2021年に舌癌になり、舌を半分切除。2022年に再発。「過酷な後遺症のある人生となってでも命をとるか?」と煩悶の末、日本でも生存事例の珍しい舌喉頭全摘手術を受け、舌と声を失う。2024年現在は、後遺症他と戦いつつ、がんで声や舌を失う判断に直面した患者や病院への自身の体験を積極的に提供している。