2022年に寄付する以前、夫妻はクリフ・バーを通じてクリフ財団に16年間にわたり毎年約300万ドル(約4億7000万円)、計4500万ドル(約70億円)を寄付した。同財団は毎年300万ドル近くを、魚などの水中生物が行き来する川などの環境を保護する活動を行っているアラスカ州ヘインズの非営利団体から、数千人のソマリア難民の再定住に取り組むメイン州の地域団体まで、計1200近くの団体などに寄付してきた。寄付1件あたりの平均額は7000ドル(約110万円)弱だ。
エリクソンは財団設立以前にも慈善活動を行っている。1998年にはすでに高校のマウンテンバイク・プログラムのスポンサーになっていた。全米で青少年向けのマウンテンバイク・プログラムを展開する非営利団体、ナショナル・インタースコラスティック・サイクリング・アソシエーション(NICA)会長のアマンダ・キャリーによると、エリクソンとクロフォードはNICAの主要な後援者だ。2009年の発足後、夫妻はNICAの初期の宣伝にかかった費用の一部を援助。以来、5万ドル(約780万円)以上を寄付して、カリフォルニア中心の自転車リーグから31州で展開される全国的な取り組みへと拡大するのを支えてきた。
「2人は常に長期的なビジョンを持っている」とキャリー。「2人はより多くの人の利益になることを念頭に置いていると思う。正しいと信じる分野における社会全体の利益だ」と語る。
クリフ財団と長期にわたって提携しているもうひとつの団体は、ノースカロライナ州ピッツボロを拠点とするルーラル・アドバンスメント・ファウンデーション・インターナショナル(RAFI)だ。1990年に設立されたRAFIは、2022年時点で純資産約440万ドル(約7億円)を有し、政策提言や給付金、そして古くからある育種プログラムと作物の多様性を強化する取り組みのシード・フォー・ブリーズのような現場でのサポートを通じて農家を支援している。「クリフ財団は、他の民間資金提供者と違ってビジョンを持っていた」とRAFIのエグゼクティブディレクター、エドナ・ロドリゲスは言う。
クリフ財団が巨額の資金をどのように使うつもりなのかはまだ明らかではない。現在のように多くの非営利団体に少額を寄付し続けるのか、あるいは寄付先の数を絞って多額の寄付をする方へとシフトするのか。
同財団は昨年、米男子プロテニス選手のフランシス・ティアフォーが、テニスが浸透していない地域でテニスに親しみやすくすることを目的に立ち上げた基金に10万ドル(約1600万円)を寄付したと報じられている。エリクソンとクロフォードはまた、住んでいるナパバレーの人里離れたポープバレーにある人気のサイクリングルートの舗装のし直しのために300万ドル(約4億7000万円)を寄付したようだ。
慈善活動以外では、夫妻は主に農場とワイナリーに注力しているとみられる。そこにはワインの試飲室があり、風味豊かなナッツや職人技のゼリーを扱っている。ブルスケッタを売るフードトラックもある。夫妻はまた、使命を持って取り組むプライベートエクイティ会社のホワイトロード・インベストメンツも経営している。この社名は、エリクソンが自転車で探検するのが好きだと言う、地図には載っていない「代替ルート(ホワイトロード)」にちなんでいる。
米金融情報サービスのピッチブックによると、ホワイトロードは2008年に設立され、これまでに30社近くを支援してきた。2011年には植物由来のエナジードリンクメーカーのグアヤキ・イェルバ・マテに350万ドル(約5億5000万円)を投資した。同社は1億2000万ドル(約188億円)超を調達し、スーパーやネットで商品を販売している。ホワイトロードは直近では、自転車やスケートボードのヘルメットを製造するサウザンドや、スポーツに特化したデジタルメディアのアウトサイドにも投資している。
(forbes.com 原文)