宇宙空間では、微小重力、宇宙放射線、1日の長さの違いによって、心血管系の障害、腎障害、筋萎縮と骨量の減少、睡眠と体内時計の障害などの宇宙病が生じる。金沢大学、文教大学、立教大学からなる研究チームは、2010年にNASAのスペースシャトルで金魚のウロコを使って行った実験により、宇宙空間ではメラトニンの産生量が減ることを確認している。それが宇宙病の原因のひとつとされた。
脳下垂体から産生されるホルモン、メラトニンには、放射線による細胞の損傷を修復する作用もある。また、概日リズムを調整する機能もあるので、体内時計の修正も期待できる。つまり、メラトニンから有効な宇宙病予防薬が作れる可能性があるのだ。
研究チームは、2025年に宇宙バイオ実験室の商用サービスを開始するIDDKと共同で、再び魚のウロコを宇宙に打ち上げて実験を行うことにした。魚のウロコは石灰化した骨基質の上に、骨細胞を作る骨芽細胞と、骨細胞を壊す破骨細胞があり、骨細胞様の細胞もある。人の骨とほぼ同じ機能を備えているのだ。2010年および国際宇宙ステーションでの実験では、ウロコの破骨細胞が活性化して骨吸収が起こること、そして骨芽細胞で作られたメラトニンが破骨細胞の活性を制御することなどを確認している。
IDDKの宇宙実験室では、同社の半導体技術を活用したレンズのない超小型顕微観察装置「MID」でウロコの状態を観察し、その後サンプルを地上で回収して治療薬開発の研究を進める予定だ。この研究は、JAXAの宇宙環境利用専門委員会の公募事業に採択された。
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