VC

2024.05.23 13:30

PEの強みをフル活用「魔の川」「死の谷」を越える架け橋に

寺田修輔(写真左) 伊東 駿(同右)|デュアル ブリッジ キャピタル

「“魔の川”と“死の谷”という、スタートアップが直面するふたつの大きな壁を越える架け橋になりたいという思いから『Dual Bridge』と名づけました」

そう話すのは、ミダスキャピタル(以下、ミダス)取締役パートナーの寺田修輔だ。同社は、エンターテインメント事業を展開する東証グロース上場のGENDAをはじめ、筆頭株主として総計約3000億円の時価総額の企業らに投資するPEファンド。2023年、グループ傘下のVCファンドとしてDual Bridge Capital(DBC)を設立し、寺田は代表パートナーに就任した。

設立には、大きく3つの狙いがあるという。1つ目は、ミダスのもつ資産の活用だ。同社はPEとして企業支援に携わるなかで、優良な人材プールを構築。DBCはそこから投資先の経営を担えるCxOクラスの人材を紹介し、事業成長を促す。

2つ目は、投資機会の増加。ミダスでは議決権の過半数を取得するマジョリティ投資を基本方針としており、マイノリティ出資での支援を求められても、対応が難しかった。DBCは、その投資機会を逃すことを避ける受け皿となる。

3つ目は、外部ステークホルダーとの関係性の強化。ミダスでは自社メンバーから集めた資金を運用する独自戦略をとっているため、金融機関や事業会社からの出資を受け付けていない。LP出資を受けるDBCが関係構築強化の役割を担うことで、将来はM&Aなどの実施で各社と連携、投資先企業の成長につなげる。

もうひとりの代表パートナーである伊東駿は、「資金供給以外でいかに価値を提供するかをVCは問われている」と話す。

冒頭で挙がった“魔の川”は「創業初期のチームづくりや事業選定のつまずき」、“死の谷”は「上場後の成長停滞に起因する企業価値の伸び悩み」を指すが、ここでは投資銀行、上場企業のCFO、PEとキャリアを歩んできた寺田と、VCの世界で実績を積んできた伊東の経験が生かされる。スタートアップの立ち上げ期には、創業支援プログラムの実施や先述の人材プールの活用で、綿密に事業領域を選定し、経営チームを組成。そして企業の成長に応じてIPO後を見据え、ファイナンスやM&Aなどのコーポレートアクションの実施をサポートする。

現在、次世代別荘販売のNOT A HOTEL、バイオ原料の調達プラットフォームを展開するCentral Link、建設業務DXのWIREBASEへの投資を発表している。投資先企業の分野は問わず、「自分たちの介在価値を出せるか」を軸に投資していくと寺田は話す。

「まずは、スタートアップエコシステムのなかから信頼を勝ち取れるか。ファンド自体が立ち上げの大事なフェーズですから、愚直にしっかりとやっていきます」


寺田修輔◎シティグループ証券、じげん取締役執行役員CFOを経てミダスキャピタル取締役パートナー。2023年4月Dual Bridge Capital代表パートナーに就任。

伊東 駿◎フューチャーベンチャーキャピタルを経てニッセイ・キャピタルに入社し投資部長として活躍。2023年5月、Dual Bridge Capital代表パートナーに就任。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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