テクノロジー

2024.05.02 17:45

月と地球の光通信技術を日本企業が開発 精度は1万分の1度

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有人月面基地の建設計画が進んでいるが、月と地球との間で光通信を行おうとすると、約40万キロメートル離れた地点の微小な光信号を受信する高感度に加え、常に位置関係が変化する条件下で正確に信号源を追尾する仕組みが必要となる。その精度は1万分の1度。そんな超高感度で超高精度の長距離光通信高感度センサーが開発された。40万キロメートルの通信を支えるのは、きわめて繊細な技術だった。

開発したのは、民間では世界初となる人工衛星向けの光即応通信ネットワークサービス「WarpHub InterSat」(ワープハブ・インターサット)の開発を進めているワープスペース。JAXAの委託でこの技術を開発した。

この技術の画期的な要素は、感度と精度の2つ。まずは感度。光信号は、月から地球に届くまでに強度が大きく減衰する。そのためセンサーは超高感度でなければならないが、感度を高めれば、目的の信号以外の「ノイズ」も拾いやすくなる。しかも、受光素子の絶縁不良や結晶欠陥などにより流れる余計な電気(暗電流)によって、光をキャッチしなくてもノイズを拾ってしまうことになる。そこで、受光面を縮小して、受光素子をマイナス20度に冷却することでノイズと暗電流の低減を目指した。結果として、暗電流は約97パーセント抑えられ、さらに信号の補足追尾に必要な受信電力を約90パーセント低減できた。

もうひとつは追尾の精度だ。月面の一点から発せられる光信号を常に受信できるよう、受信センサーがそれを追尾しなければならない。角度が1万分の1度ずれてもダメという世界だ。それは、東京駅から富士山山頂のバスケットボールに、レーザーポインターの光を当て続けるようなものだという。今回の開発では、その追尾精度も達成された。

40万キロメートル離れた天体間の通信という壮大な計画は、こうした微細な技術が支えることになる。宇宙とは、大きくて小さいものだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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