欧州

2024.04.22 17:00

2度の大戦生き延びた世界最古の軍艦、ウクライナが攻撃 潜水艦救難艦「コムーナ」

2019年4月、ウクライナ南部オデーサで行われた新型巡航ミサイルの発射実験の様子(Drop of Light / Shutterstock.com)

コムーナは、また別の意味でもかけがえのない存在である。彼女は過去からタイムトラベルしてきたような艦なのだ。博物館に所蔵されるレベルの古い軍艦でありながら、驚くべきことに、同世代の艦艇が錆び果てて無に帰したあとも、何世代にもわたって現役で使われ続けてきた。
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さらに、黒海艦隊は一時的にせよ恒久的にせよコムーナを失えば、きわめて重要な能力も失うことになる。船体2つを横に並べて甲板でつないだ双胴(カタマラン)構造をしているコムーナは、中央に大きく開いたスペースから小型の救助用潜水艇を発進させ、回収したり、沈没した艦艇の残骸などを海底から引き揚げたりできる。

2022年4月、黒海艦隊の巡洋艦「モスクワ」が黒海西部で撃沈された時にも、コムーナと積載するAS-28小型救難艇がこの艦の一部や乗組員の遺体の回収に寄与したと伝えられる。

昨年9月に1隻をウクライナ側のミサイルで爆破された結果、4隻体制になっている黒海艦隊のキロ級潜水艦部隊にとって、コムーナの救助・回収能力は、ますます危険になっている黒海を航行し、そこで戦闘を行う自信を与えていた。
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コムーナは貴重な歴史的遺物と言えるような軍艦だが、だからといって現在の残酷な戦場において特別な地位を与えられているわけではない。海戦に詳しいH・I・サットンは「客観的にみて彼女は正当な目標だ」と指摘している

コムーナを失えば、黒海艦隊の残存する潜水艦は、いざという時に支援がない状態での航行を余儀なくされる。その一隻が何らかのアクシデントで海底に沈んだ場合、これまでコムーナから発進してきた救助隊は、生存者がいてもそこまでたどり着く手立てがないかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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