マムズタッチは、1997年に一号店をオープンした。現時点で店舗数は1420に上り、韓国内ではマクドナルドやロッテリアを上回り、最大のハンバーガーチェーンとなった。もともとは10代や20代を中心に知名度が広がっていったが、現在では老若男女が訪れるブランドに成長した。 人気の理由は、味とコストパフォーマンスだ。マムズタッチは注文を受けると、以下の手順で(サイバーガーの場合)一から調理を行う。
1. パンを焼く
2. 衣を手作りで練って着せる
3. チキンを揚げる
4. フライドチキンを野菜/ソースと一緒にパンにサンドする
看板商品であるサイバーガーはカリカリに揚げたチキンに新鮮でシャキシャキのレタスなどを挟み、その分厚さから別名「あご外れバーガー」とも呼ばれる。このボリューム感のあるハンバーガーに、ポテトとドリンクを合わせたセットメニューの価格は770円。韓国内では“神コスパ”と評価されている。
サイバーガーとポテト
ちなみに、英エコノミスト誌のビッグマック指数(各国の購買力を測る指標)では、韓国は607円で日本が450円。そのことを踏まえると、安いという評価に納得だ。
「美食国家」日本で成功すれば──
同ブランドは2021年以降、米国、タイ、モンゴルに進出している。米国は1店舗、タイは6店舗で2024年末までに12号店をオープンする予定。モンゴルはこれまで4号店で、同年内に10号店まで増やす計画だという。海外ではすでに積極的な事業拡大を図るマムズタッチだが、日本は海外展開の本丸と位置付けている。CEOのキム・ドンジョンは「日本は美食国家。ここで成功すれば世界どこでも通用するグローバルブランドになれる」と語る。
その思いのもと、今年2月にマムズタッチの経営陣たちは市場調査のため数週間にわたって日本を訪れた。まずは、モスバーガーやバーガーキング、マクドナルドといった日本で展開されているチェーンをまわった。チキンバーガーやプルコギバーガー、照り焼きバーガーなど、マムズタッチの競合商品になりうるメニューをリストアップ。その後、数日間ハンバーガーを食べ続け、味はもちろんのこと、パティの重量や材料の分析、さらには満足感やテンションの上がり具合といった定性的な要素にまで目を向け「コスパ」を評価した。市場分析の結果をキムはこう語る。
「コスパも含め、これなら満足だと思えるハンバーガーは見つけられませんでした。だからこそ味の良さにフォーカスすれば、我々が日本で成功する可能性もあるのではないかと感じました」
米国やタイ、モンゴルではここまでの調査は行っていないといい、それだけ日本展開への本気度がうかがえる。
昨年10月から11月にかけて渋谷で実施したポップアップも自信に繋がった。3週間で3万人以上が訪れるという繁盛っぷりをみせ、来店者へのアンケートでは90パーセントが「日本で競争力が高い」「メニューに非常に満足した」と答えた。
「マムズタッチは、当時は日本では無名でした。それでも『美味い!』というクチコミによってこれだけの人が訪れました」
本気度は、会社形態にもあらわれている。現在展開している海外の店舗は全てマスターフランチャイズ(MF)だ。そのため、価格設定などはある程度、契約事業者に委ねている。一方で、渋谷店は海外では初の直営店。価格やブランディングなどすべてをマムズタッチ本社がコントロールすることになるわけだ。