実際、ロンドン市街地のほとんどは制限速度が20マイル(約32km/h)に設定されており、30マイル(約48km/h)まで出せる区間はわずかだった。また、私は最近、金塊を盗んだ覚えもないので、映画『ミニミニ大作戦(原題:The Italian Job)』のようにパトカーから逃げるための運転をする必要もなかった。とはいえ、今回のようにゆったりとしたペースでも、ミニeマスタードは状況をわきまえた楽しさに溢れていた。
英Zonic motors(ゾニック・モーターズ)製のモーターは最高出力72kW(98ps)と最大トルク175Nmを発生し、前輪を駆動する。比較のために挙げると、クラシック・ミニの直列4気筒エンジンは最終型でも最高出力62ps、最大トルク94Nmだった。デビッド・ブラウン・オートモーティブの「ミニ・リマスタード(今回紹介しているeマスタードのエンジン版)」では71hp(72ps)にチューンされている。
eマスタードはEVならではの瞬時に発生するトルクを活かし、これまで生産されたどのクラシック・ミニよりもはるかに力強く加速する。クラシック・ミニで最強と謳われた1275ccエンジン搭載の「クーパーS」でも0-60mph加速は11.2秒だが(850ccの最初期のモデルは延々と24.9秒もかかった)、eマスタードは8.5秒で62mph(約100km/h)に達する。現代のEVの基準から見たらものすごく速いというわけではない。しかし、交通の流れが遅い市街地では驚くほど活発に感じられる。信号待ちからのダッシュでは多くのクルマを楽々と置き去りにできるだろう。