米ワシントンに本部を置く国際金融協会(IIF)の報告書によると、悲観的だが理論上のシナリオでは、世界の国内総生産(GDP)は今年0.4%落ち込むという。
西側諸国はスエズ運河に向かう貨物船を攻撃しているフーシ派を打倒するか、封じ込める必要があると警告している。
「紅海での貨物船への攻撃は、世界経済にとって特に憂慮すべきものだ。フーシ派が繰り返す攻撃によりスエズ運河の通航が減少し、世界の輸送コストが上昇している」と報告書にはある。
そうした現状は、米英の海軍がフーシ派のロケット攻撃を抑制できなかったり、封じ込められなかったりすればはるかに悪化する可能性があると報告書は説明している。
紅海における安全の確保が重要なのは、世界の石油の30%がこの地域を経由して運ばれているからだ。極めて悲観的なシナリオに沿って石油の輸送が混乱すれば、石油を輸入している、していないにかかわらず、どの国もがエネルギーコストの高騰を主因とするインフレ率の上昇に苦しむことになる。
「エネルギー価格の上昇幅と上昇が続く期間を予測することは難しいが、2024年には石油と天然ガスの価格が40%上昇すると想定している」と報告書にはある。「その上、貨物船への攻撃が続くことで世界貿易量の伸びは0.8%(基準シナリオでは1.6%)に減速することが見込まれ、これもインフレにつながる」とも指摘している。
その結果、米連邦準備制度理事会(FRB)やイングランド銀行(英中央銀行)、欧州中央銀行は、多くの人が予想しているよりも長く高い金利を維持することになるかもしれない。その他の国々の中央銀行はブレーキをかけ続けるだろう。
実際、そうした状況になれば、今年の米国のGDP成長率は予想されている2%ではなく1.7%となるとIIFはみている。経済情報サイトのトレーディング・エコノミクスのデータによると、米国の2023年第4四半期の成長率は年率換算で前期比3.4%だった。
欧州の状況はさらに悪く、欧州連合(EU)の成長率は基準シナリオの0.8%を下回り、わずか0.4%にとどまると予想されている。
食料品やエネルギーなど生活費の上昇と借入コストの増加は通常、主要国の経済成長を鈍化させる。ロシアのウクライナ侵攻を受けて天然ガスや石油の価格が高騰したことで、欧州の多くの国々はすでに急激な物価上昇に苦しんでいる。EUと英国はこれまでロシアから輸入される安価なエネルギーに依存してきた。
明るいニュースもある。IIFによると、上記の悲観的なシナリオが現実のものとなる可能性は30%以下だという。だが、米国でイスラエルを支持する声が弱まっていることを考えると、バイデン政権がイスラエルへの軍事支援から手を引く可能性はあるようだ。
中東全域にまたがって複数の民兵組織を支援するイランが西側諸国に経済戦争を仕掛ける決意を固めているとみられることを考えれば、かなり妥当なシナリオだろう。
(forbes.com 原文)