同社は10月末のプレスリリースで「過去数カ月間に、当社は先駆的企業として、EVSUVのVF8を運転されるお客様にこれまで以上にご満足いただくため、いくつもの改善を実施しました」としている。トゥイは動じることなく、ビンファストは第4四半期に売り上げ加速が見込まれ、23年はEV5万台納車という目標を達成できると断言する。「数カ月後にはいくつかのモデルを全世界で発売する用意があります」(トゥイ)
23年末までにはフランス、ドイツ、オランダでもVF8の販売を開始する計画で、7人乗りSUV“VF9”と小型SUV“VF6”の北米への出荷も始める。
ビンファストの車は、見た目については高い評価を得ている。フェラーリ458スパイダーなどの人気スポーツカーの製造に貢献したイタリアのデザイン会社ピニンファリーナのおかげだ。だが価格面では競争力に欠ける、とあるアナリストは言う。VF8は安くても4万6000ドルで、テスラのモデルYやフォードのマスタング・マッハE、ヒュンダイのアイオニック6と同水準だ。一方VF8はフルチャージで航続距離425kmだが、航続距離では価格が同等のこれら3つのモデルを下回る。
「当社の車の価格には最初から最先端のハイテク機能が含まれているのです。ですから、競合他社より高いということはありません」(トゥイ)
例えば、ビンファストの車には最新の運転支援システムが搭載されており、車線変更補助や自動駐車支援をしてくれるのだ。
前出のアナリストは、ビンファストが米国でもっと現地の業界の専門家の知見を活用していれば、より多くの支持を得られただろうと考えている。
だがトゥイは、ビンファストが特定の専門家に依存することはないと話す。
「ビンファストはスタートアップ企業です。開発のための能力とスピードが必要であり、誰もがそれに順応できるわけではありません」
創業当初のビンファストは、業界のベテランを採用していたが、彼らのLinkedInのプロフィールを見ると長く在籍しなかった人もいる。例えば、オペルの元CEOで20年以上の業界での経験をもつミヒャエル・ローシェラーは、21年9月にビンファストにグローバルCEOとして加わったが、6カ月後に離れている。彼の後任がトゥイだ。